看護師 辞めたいと思う気持ちを抱えたまま、毎日の仕事に向かうのはとても苦しいことですよね。
忙しさや人間関係で心がすり減っているのに、弱音を出しづらくて、自分だけがつらいと感じてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、看護師を辞めたいと感じる心の背景を心理的な視点から整理しながら、今の気持ちを少し楽にする考え方や選択肢を一緒に見つめていきます。
現場で働く看護職の声や、メンタルケアに関する専門的な知見も踏まえつつ、自分の本音に気付いていくための小さな手がかりをお渡しできればうれしいです。
看護師が辞めたいと思う気持ちはおかしくないという話

看護師を辞めたいと思うことは、決して珍しいことではありません。
忙しさや人間関係、ミスへの不安で心がすり減っていくと、自分が弱いだけではないかと責めてしまいがちです。
ここでは、看護師を辞めたいと思う気持ちそのものを責めるのではなく、そんな思いが生まれる背景や意味を一緒に見つめ直していきます。
自分の気持ちを少し俯瞰して見られるようになると、今後の選択肢も見えやすくなります。
看護師の多くが辞めたいと感じるという現実
看護師を辞めたいと感じているのは、自分だけではないのかもしれません。
さまざまな調査でも、多くの看護職が一度は辞めたいと考えた経験があるとされています。
これは仕事への意欲が低いわけではなく、強い責任と重い負担を抱え続けているからこそ生まれる感情でもあります。
現場では、忙しさや人手不足でゆっくり話を聞いてもらう機会が少なく、弱音を出すと迷惑になるのではと考えてしまうこともあります。
そのため、本当は限界に近いのに、冗談めかして辞めたいと言うしかできなかったという声もよく聞きます。
こうした背景を知っておくと、自分の心だけが特別おかしいわけではないと少し受け止めやすくなります。
まずは、この感情は看護師という仕事の過酷さから自然に生まれるものだと理解しておくことが大切です。
心が限界サインを出すときに起きていること
辞めたいという思いが強くなってきたとき、心の中ではさまざまなサインが出ていることが多いです。
仕事に行く前から涙が出てしまう、前は普通にできていたことに集中できない、休日なのに気持ちが休まらないなど、小さな変化が積み重なっていきます。
心理学では、こうした状態を慢性的なストレスや燃え尽きに近い状態として説明することがあります。
まじめで責任感が強い看護職ほど、自分の限界を後回しにして患者や周りを優先しやすく、心の悲鳴に気付きにくい傾向も指摘されています。
もし最近の自分に当てはまるサインが増えているなら、心が限界に近づいている合図かもしれません。
そのサインは、怠けではなく、自分を守るために心が必死で出しているメッセージです。
気付けたこと自体が一歩なので、まずは自分の状態を認めてあげるところから始めてみるのも一つの方法です。
つらい感情にふたをしないための考え方
辞めたいという気持ちを抱えたとき、多くの看護職が最初にしてしまうのは、その感情にふたをすることかもしれません。
こんなことで辞めたいと思うなんて甘い、自分より大変な同僚もいるのにと、自分を責めて気持ちを押し込めてしまいやすいです。
しかし、感情にふたをし続けると、心の中で膨らみ続けた不満や悲しさが、ある日突然爆発することがあります。
大切なのは、辞めたいという言葉の裏側にある本当の気持ちを少しずつ言葉にしていくことです。
何が一番つらいのか、どの場面で特にしんどさを感じるのか、紙に書き出してみると、自分でも気付いていなかった本音が見えてくることがあります。
この作業は、すぐに結論を出すためではなく、自分の心を丁寧に扱うための時間です。
つらい感情を押し込めるのではなく、その存在を認めてあげることが、今後の選択を冷静に考える土台になります。
看護師が辞めたいと感じる主な理由と心の背景

看護師を辞めたいと思うとき、表向きの理由は一つに見えても、その奥にはいくつもの感情が重なっていることが多いです。
人間関係のつらさや夜勤のきつさ、責任の重さなど、よく聞く理由の一つ一つの裏側には、その人なりの背景や心のドラマがあります。
ここでは、よく挙げられる主な理由を整理しながら、その影に隠れている気持ちも一緒に見ていきたいと思います。
人間関係のストレスと孤立感からくるしんどさ
看護師を辞めたい理由として、真っ先に浮かぶのが人間関係という声はとても多いです。
忙しい現場では、きつい口調になりやすかったり、先輩と後輩の距離感が極端に近かったりして、ちょっとした注意が心に深く刺さることがあります。
中には、詰められるような指導が続いて、自分の存在ごと否定されたように感じてしまったという話も耳にします。
その結果、ナースステーションで気軽に雑談していても、どこか一人浮いているような感覚を覚えることがあり、孤立感がじわじわと大きくなっていきます。
本来ならチームで支え合うはずの職場が、いつの間にか心が休まらない場所になってしまうと、辞めたい気持ちが強くなるのは自然なことです。
人間関係の悩みは、性格の問題というよりも、職場の文化やコミュニケーションの癖が影響していることも多いので、自分だけのせいだと思い込みすぎないことも大切です。
夜勤や不規則な生活リズムが心に与える影響
夜勤やシフト制の生活は、身体だけでなく心にも少しずつ負担をかけていきます。
睡眠時間が細切れになったり、休みの日も体調を整えることで終わってしまったりすると、仕事以外の時間で心を回復させる余裕がなくなっていきます。
友人や家族と生活リズムが合わず、約束をキャンセルすることが続くと、プライベートの人間関係まで疎遠になってしまったという声もあります。
そうなると、仕事で疲れをためて、休みの日はひたすら寝て終わりというサイクルになり、毎日が看護と睡眠だけの生活のように感じやすいです。
心理学の観点から見ると、睡眠不足や生活リズムの乱れは、気分の落ち込みやイライラといった感情の揺れを強める要因になりやすいとされています。
もし、最近笑う回数が減ったと感じたり、好きだったことへの興味が薄れてきたと感じるなら、リズムの乱れが心に影響している可能性も意識しておくと良いです。
命を預かる責任の重さとプレッシャーの負担
看護師は、目の前の患者の命や生活に深く関わる仕事です。
その分、些細な判断ミス一つでも重大な結果につながるのではないかというプレッシャーを常に抱えています。
インシデントやヒヤリハットを経験すると、自分を責め続けてしまい、次の勤務でも同じ場面になるたびに緊張で体が固まることがあります。
周囲からは冷静に仕事をこなしているように見えていても、心の中では常に何かを確認し続けていて、気が休まる瞬間がなかなか持てません。
この状態が続くと、仕事そのものよりも、不安と恐怖に耐え続けることの方がつらくなり、辞めたいという思いが強くなっていきます。
責任感が強い人ほど、自分の限界を認めることに抵抗を感じやすいですが、心の安全を守ることも看護を続けるうえで大切な視点の一つです。
給与や評価への不満から生まれる報われなさ
体力も気力も使い切るような働き方をしているのに、給与や待遇が見合っていないと感じると、虚しさが募っていきます。
残業が増えても十分な手当がつかない、責任の重い業務を任されているのに評価が上がらないなど、現実とのギャップは少しずつ心を削っていきます。
同世代の友人が、土日休みで安定した収入を得ている話を聞くと、自分の選んだ道に迷いが生まれることもあるでしょう。
お金だけが全てではないと分かっていても、生活や将来の安心に直結する部分だからこそ、納得できない感覚は無視しづらいです。
こうした報われなさが続くと、働く意味を見失い、辞めたいという気持ちが大きくなっていきます。
自分が大切にしたい価値観が何なのか、一度立ち止まって見つめ直してみることも、今後の働き方を考えるヒントになります。
教育体制やサポート不足による不安と戸惑い
十分なフォローや教育がないまま現場に立たされると、辞めたい気持ちは一気に強くなります。
プリセプター制度があっても形だけになっていたり、忙しさのあまり質問するタイミングが取れなかったりすると、分からないことを抱えたまま業務を続けることになります。
その結果、常にどこかで間違えているのではないかという不安を抱えながら働くことになり、自信よりも恐れの方が大きくなってしまいます。
教育体制が整っていない職場では、一人一人の成長のペースが尊重されにくく、ついていけない自分が悪いと感じてしまいがちです。
けれど、本来は職場側が新人や中堅を支えるしくみを整える責任も持っています。
サポートの不足によって生まれた不安や戸惑いは、自分の努力不足だけで説明できるものではないと知っておくと、少し気持ちの置き場が変わります。
心理学から見る辞めたい気持ちの正体

辞めたいという思いは、単なる甘えではなく、心が限界に近付いたときの自然な反応でもあります。
ここでは、心理学の考え方を借りながら、看護師を辞めたいと感じる気持ちを少し分解して眺めてみます。
自分の心の動きが言葉になると、何を大事にしたいのかも見えやすくなっていきます。
燃え尽きにつながるバーンアウトの心の流れ
看護の現場でよく話題になるのが、燃え尽きに近い状態です。
最初はやりがいを感じて頑張れていたのに、ある時期から急に疲れが抜けなくなり、気力まですり減っていく流れが特徴と言われます。
心理学では、情緒的な疲れや仕事への距離感の変化、自分は役に立てていないという感覚が重なると、燃え尽きにつながりやすいと説明されることがあります。
看護師の場合、患者や家族に気持ちを向け続ける一方で、自分のケアが後回しになりやすく、知らないうちに限界ラインを越えてしまうことも多いです。
もし、昔の自分と今の自分を比べた時に、喜びよりも義務感が前に出ていると感じるなら、少し立ち止まって心の疲れ具合を見直してみるのも一つの方法です。
完璧であろうとする気質と自己否定感の関係
ミスをしてはいけないという意識が強いほど、自分に対して厳しくなりやすいです。
完璧を求める気持ちは、丁寧な看護につながる大切な一面もありますが、行き過ぎると小さな失敗で自分全体を否定したくなってしまいます。
例えば、忙しい中で一つの確認を忘れた時に、冷静に振り返るのではなく、自分は看護師に向いていないとまで感じてしまうことがあります。
これは性格だけの問題ではなく、失敗を許さない空気感や、相談しづらい職場の雰囲気も影響していると言われます。
少しずつでも、自分ができている部分にも目を向ける練習をしてみると、自己否定感が和らぎ、辞めたいという気持ちの重さも変わってくることがあります。
職業としての看護と自分らしさの揺らぎ
看護師として求められる姿と、自分が本当に大切にしたい生き方との間で揺れる時期もあります。
患者や家族に寄り添いたいのに、現実には時間に追われて流れ作業のようになってしまうと、自分がしたかった看護とのギャップに苦しさを感じやすいです。
また、仕事中心の生活が当たり前になってくると、趣味や家族との時間、将来のことなど、自分自身の人生について考える余裕が少なくなっていきます。
その結果、看護師としての自分は何とか続けているけれど、一人の人としての自分が置き去りになっているような感覚が出てくることがあります。
この揺らぎは、キャリアの節目に多くの人が経験するとされるもので、新しい働き方や環境を考えるきっかけにもなります。
看護という仕事と、自分らしい生き方のバランスをどこで取るかを考えてみることも、心を守る上で大切な視点です。
キャリアの段階ごとに変わる看護師の心の悩み

看護師として働く中で感じる辞めたい気持ちは、経験年数や立場によって少しずつ形を変えていきます。
同じ辞めたいでも、新人の頃と数年経ってからでは、抱えている悩みや葛藤の中身が違うことが多いです。
ここでは、キャリアの段階ごとにどのような心の揺れが起こりやすいのかを整理して、自分の今の状況を客観的に眺めるヒントにしていきます。
新人の時期にぶつかりやすい心の壁
新人の頃は、毎日が初めての連続で、緊張が続きやすい時期です。
先輩の後ろをついていくうちに、いつの間にか自分だけ動きが遅いのではないかと不安になったり、指導の一言一言に心が揺さぶられたりします。
学校で学んだ知識と、現場のスピードや暗黙のルールとのギャップに戸惑う場面も多く、頭では理解していても手が追いつかないもどかしさを抱えやすいです。
ミスをしないようにと意識するあまり、常に体も心も固くなってしまい、勤務が終わる頃にはぐったりして、次の日のことを考えるだけで気持ちが重く感じられることもあります。
この時期の辞めたいという思いには、自信の無さや、場に馴染めていない感覚が大きく関わっています。
できていない部分ばかりに目が行きやすいからこそ、自分が少しずつできるようになっていることにも意識を向けてみると、心の受け止め方が少し変わってきます。
経験を積んだ頃に訪れる挫折感と迷い
数年働いて仕事の流れが分かってきた頃にも、別の形で辞めたい気持ちが顔を出すことがあります。
新人の頃に比べて手技や業務には慣れていても、患者や後輩から頼られる場面が増えることで、新しいプレッシャーを感じやすくなります。
理想として思い描いていた看護と、実際の業務の忙しさとの間に差があると、このままここで働き続けて良いのかという迷いがふと浮かぶこともあります。
同期が転職したり別の分野に進んだりする話を聞くと、自分だけ取り残されているような感覚を覚えることもあり、挫折感や焦りが重なっていきます。
この段階での悩みは、現場に慣れてきたからこそ見えてくる課題や、自分の将来像とのズレの中で生まれるものです。
今の職場でできる工夫もあれば、別の選択肢を視野に入れることも一つの方法なので、白か黒かで決めつけずに考えてみることが大切です。
中堅としての役割と期待に押しつぶされそうなとき
中堅と呼ばれる立場になると、現場で頼られる場面が増え、チームを支える役割を担うことが多くなります。
その一方で、管理職の考えと現場スタッフの思いの間に挟まれて、板挟みのような感覚に苦しむ人も少なくありません。
後輩の指導や新人教育を任される中で、自分自身のケアやキャリアについて考える余裕が削られていき、気付けば毎日をこなすだけになってしまうこともあります。
気持ちのどこかで、自分もまだ迷いや不安を抱えているのに、弱い部分を見せられない雰囲気に疲れを感じるという声もよく聞かれます。
この時期に辞めたいと思う背景には、責任の重さと、自分の人生とのバランスの取りづらさがあります。
誰かの期待に応えるためだけでなく、自分は今後どう働きたいのかを静かに問い直してみる時間を取ってみると、次に進む方向が少し見えやすくなります。
辞めるか続けるかで揺れたときの心の整理のしかた

辞めたい気持ちと、続けた方が良いのではという思いが行ったり来たりすると、とても消耗します。
衝動的に決めて後悔したくない一方で、このまま我慢し続けるのも苦しいものです。
ここでは、辞めるか続けるかで揺れているときに、自分の心を少し落ち着いて整理していくための視点をまとめていきます。
今の職場で続ける選択を見直す視点
辞めたいと思いながらも、今の職場で続けることも一つの選択肢です。
ただ、その場合は我慢を重ねるだけになっていないかを冷静に見直しておくことが大切です。
具体的には、何を変えられそうか紙に書き出してみると、状況と感情を分けて考えやすくなります。
例えば、配属先を相談してみる、特定の先輩との関わり方を変えてみる、苦手な業務のフォローをお願いしてみるなど、小さな工夫の余地が見えることもあります。
続けると決めるのであれば、自分の心身を守る条件や期限をゆるく設定しておくと、ただ耐え続けるだけになりにくいです。
そのうえで、本当に叶えたいことが何なのかを自分に問い直してみると、今の職場でできることと、別の場所で求めたいものが少しずつ分かれてきます。
異動や働き方を変えるという中間の選択肢
辞めるか辞めないかの二択に追い込まれると、どちらを選んでも間違いに思えて迷いが深くなってしまいます。
そんなときは、異動や勤務形態の変更など、いわば中間の選択肢を検討してみるのも一つの手です。
同じ病院の中でも、診療科が変わるだけで人間関係や業務内容、忙しさの質ががらりと変わることがあります。
夜勤がつらい場合は、日勤中心の部署や非常勤という形を視野に入れてみると、心と体の負担が軽くなる可能性もあります。
すぐに全てを変えるのではなく、試しに相談してみる段階を挟むことで、自分に合う働き方のイメージが少し具体的になっていきます。
中間の選択肢を知っておくことは、極端な判断を避け、自分に合ったペースで変化していくための助けになります。
転職や退職を選ぶときに大切にしたい価値観
転職や退職を視野に入れたときに、一番大事になるのは、自分が何を守りたいかという価値観です。
収入、働く場所、休みの取りやすさ、人間関係、専門性の追求など、優先したいものは人によって違います。
すべてを同時に満たす職場を探そうとすると苦しくなるので、これだけは外したくない条件を三つほど書き出してみると、選び方の軸が見えてきます。
また、辞める理由だけでなく、次の職場でどんな自分でいたいかも一緒に考えておくと、求人情報を見るときの目線が変わります。
看護から離れる選択も含めて検討するときは、資格や経験をどのように生かしたいのか、長い目で見たときの生活もイメージしておくと安心です。
転職や退職は、逃げというよりも、自分の人生をどう形作っていくかという選択です。
その選択を支えるのが、自分なりの価値観と言えます。
看護師としての自己肯定感を守るセルフケア

看護師を辞めたいと思う気持ちが強くなると、自分の価値そのものまで小さく見えてしまうことがあります。
どれだけ頑張っていても、反省点や改善点ばかりが目について、素直に自分を認めにくくなる瞬間も多いですよね。
ここでは、看護師としての自分を少し優しく受け止め直すためのセルフケアについて、一緒に整理していきます。
特別な道具はいらない方法ばかりなので、できそうなものから試してみるだけでも意味があります。
感情を書き出して自分の心を客観視する方法
辞めたい気持ちがぐるぐるするときは、頭の中で同じ考えが何度もリピートされて、余計につらく感じやすいです。
そんなときに役立つのが、紙やノートにそのまま感情を書き出してみることです。
きれいな言葉にしようとせず、腹が立ったこと、悲しかったこと、理不尽だと感じた場面などを、そのまま並べていくイメージで大丈夫です。
ポイントは、出来事だけでなく、そのときどんな気持ちになったのかも一緒に書いておくことです。
書き終わってから少し時間を置いて読み返すと、自分がどんな状況で一番しんどさを感じやすいのかが、少し客観的に見えてきます。
心理の現場でも、感情を書き出す作業は、心の整理やストレスの軽減に役立つ方法としてよく取り入れられています。
一度で完璧に整理しようとせず、寝る前の数分だけでも続けてみると、自分の心の傾向が少しずつつかめていきます。
小さなできたを拾い直して自信を取り戻す工夫
自己肯定感が下がっているときほど、できなかったことや失敗したことにばかり目が行きやすいです。
しかし、どんな一日にも、小さなできたは必ずいくつか紛れています。
例えば、忙しい中でも患者の話を少しだけ丁寧に聴けたこと、ミスを防ぐためにダブルチェックを意識できたこと、同僚にさりげなく声をかけられたことなどです。
その一つ一つは当たり前に思えるかもしれませんが、積み重なると確かな力になっています。
一日の終わりに、今日のできたを三つだけメモしておく習慣を作ってみると、少しずつ自分を見る目が変わっていきます。
看護の仕事は、結果が目に見えにくいことも多く、感謝される機会も偏りがちです。
だからこそ、自分で自分のがんばりを拾い上げることが、自己肯定感を守るための大事なケアになります。
助けを求める勇気と相談先を選ぶときのポイント
心が限界に近付いているときこそ、誰かに助けを求めることが必要になります。
それでも、多くの看護職が口にするのは、迷惑をかけたくない、弱いと思われたくないという戸惑いです。
相談するときは、何でも話せる完璧な相手を探そうとするよりも、話しても大丈夫そうだと感じる人を一人思い浮かべてみるところから始めてみると動きやすくなります。
同じ職場の中なら、完全に解決策をくれなくても、気持ちを受け止めてくれそうな先輩や同僚は誰かという視点で探してみると、候補が浮かぶかもしれません。
もし職場の人には話しづらいと感じるなら、産業保健スタッフや外部の相談窓口、カウンセリングなど、公的な機関や専門家を頼る選択肢もあります。
医療系の職場では、心の不調を抱える人が少なくないことから、メンタルヘルスの相談体制を整える動きも広がっています。
一人で抱え続けるより、少しでも安心して話せる場所を確保しておくことが、長く働くうえで心強い支えになっていきます。
職場との関係を少し楽にするコミュニケーションの工夫

職場の人間関係がつらいと、どれだけ仕事が好きでも続ける気力が削られてしまいます。
ただ、性格を無理に変えなくても、伝え方や距離のとり方を少し工夫することで、心の負担を軽くできる場面もあります。
ここでは、今の職場で少しでも楽に呼吸できるようになるためのコミュニケーションの工夫を、一緒に確認していきます。
つらさや限界を伝えるときの言葉の選び方
しんどさを誰かに伝えるとき、つい我慢の限界まで抱え込んでから一気に言葉があふれてしまうことがあります。
その結果、感情が強く出てしまい、自分の本当に伝えたかったことがうまく届かないということも起こりやすいです。
話を切り出すときは、いきなり不満を並べるのではなく、まず状況を簡単に説明してから、自分の気持ちを続ける形にしてみると、相手も受け止めやすくなります。
例えば、最近夜勤が続いて体力的にきつくなってきました、そのうえで少しシフトを相談したいです、というように、事実と感情とお願いを分けて伝えるイメージです。
全部を一度で解決しようとせず、小さな一つのテーマに絞って話してみると、自分の中でも整理しやすくなります。
メモに話したいことを箇条書きにしてから相談に行ってみるのも、緊張を和らげる工夫として役立ちます。
理不尽さから自分を守る境界線の引き方
どの職場にも、理不尽な言動や、必要以上にきつい言い方をする人がいることがあります。
そんなとき、自分が全部悪いのだと受け止め続けてしまうと、心がすり減る一方になってしまいます。
大切なのは、仕事上の指摘と、人格を傷つけるような言動を頭の中で分けて考えることです。
明らかに行き過ぎた言い方をされたと感じたときは、自分の中でここから先は踏み込まれたくないという境界線を意識してみることも一つの方法です。
具体的には、その場で反論が難しい場合でも、後で信頼できる上司や人事の窓口に相談してみることで、組織として対応してもらえる可能性があります。
理不尽な扱いから距離を取る行動は、わがままではなく、自分の心の安全を守るための大事な選択です。
信頼できる味方を見つけるための動き方
どんな職場でも、一人でも話を聞いてくれる味方がいるかどうかで、心の負担は大きく変わります。
最初から何でも分かり合える相手を探すのではなく、ちょっとした雑談がしやすい人、さりげなくフォローしてくれる人に目を向けてみるところから始めてみると良いです。
報告や相談をこまめにしてみて、反応が安心できる人がいれば、少しずつ自分の気持ちも話してみるというステップを踏んでいきます。
同じ部署に見当たらない場合は、他病棟の同期や、以前一緒に勤務した仲間など、院内の別のつながりを思い出してみるのも一つの手です。
外部の勉強会やオンラインコミュニティなどで、同じような立場の看護職とつながることで、職場とは違う安心感を得られることもあります。
自分を理解してくれる人が一人でもいると、辞めたい気持ちを抱えながら働く日々の中で、心の支えが増えていきます。
メンタルが限界と感じたときに優先してほしいこと

心も体も張り詰めた状態が続くと、ある日突然、何もかも投げ出したくなる瞬間が訪れることがあります。
頑張り屋の看護職ほど、そのサインを見て見ぬふりをしてしまいがちですが、本当は一番最初に守ってほしいのは自分のいのちと健康です。
ここでは、メンタルが限界に近付いていると感じたときに、どんな行動を優先しておくと安心かを、一つずつ整理していきます。
休むことや診断書を考えるべきサイン
まず大事なのは、どこまで来たら一度立ち止まった方が良いのかという目安を知っておくことです。
例えば、仕事に行こうとすると吐き気や動悸が続く、涙が止まらなくなる、何をしても楽しいと感じられない状態が長く続いている場合は、心の赤信号に近いサインと考えられます。
寝てもまったく疲れが取れない、集中力が極端に落ちてミスが増えていると感じるときも、無理を重ねるより休養を優先した方がいい段階かもしれません。
こうしたサインが複数当てはまるときは、自分の根性で乗り切ろうとするのではなく、一度医師の診察を受けて、必要であれば休職のための診断書について相談してみることも一つの方法です。
診断書をもらって休むことは、怠けではなく、これ以上悪化させないための大切な治療の一部です。
後から振り返って、あのとき早めに休んでおいて良かったと感じる人も少なくないので、少しでも迷いを感じたら早めに専門家に相談してみてください。
心療内科やカウンセリングを利用する意味
心の不調で受診することに抵抗を感じる人は多いですが、医師やカウンセラーと話す時間は、自分の状態を客観的に見直す大きな助けになります。
心療内科や精神科では、睡眠や食欲、気分の波などを一緒に振り返りながら、今どの程度負担がかかっているのかを診てくれます。
必要に応じて薬を使いながら、日常生活が少しでも楽になるよう調整することもありますし、休職や働き方の見直しについての医療的な意見をもらうこともできます。
カウンセリングでは、日々の出来事や職場での出来事を安心して話せる場が確保されるため、頭の中でぐるぐるしている思考を一つ一つ整理しやすくなります。
看護の世界では、人の悩みや痛みに寄り添う側でいることが多い分、自分のこととなると後回しにしてしまいやすいです。
専門家の力を借りることは、自分の心を整えるための大切な選択肢ですし、長く働き続けるための一歩とも言えます。
身近な人へ打ち明けるときに気をつけたいこと
限界に近付いた気持ちを、家族や友人など身近な人に打ち明けるかどうか迷うこともあると思います。
そのときに意識しておきたいのは、全てを完璧に分かってもらおうとし過ぎないことです。
医療現場の細かな事情までは伝わらなくても、今とてもつらいこと、少し休まないと自分がもたないと感じていることなど、要点を絞って話してみると伝わりやすくなります。
また、相手にどうしてほしいのかを一言添えておくと、支える側も動きやすくなります。
ただ話を聞いてほしいのか、具体的な助言が欲しいのか、家事や育児を少し手伝ってほしいのかなど、自分なりの希望を小さく言葉にしてみることがポイントです。
もし一人に話すのが不安な場合は、信頼できそうな人を二人ほど思い浮かべておき、様子を見ながら少しずつ打ち明けていくという方法もあります。
弱音を出すことは、相手を困らせる行為ではなく、自分の心を守るための大切なサインです。
看護師というしごととの距離感を取り戻す視点

看護師の仕事に真剣に向き合ってきた人ほど、しごとと自分の人生が一体化しやすいと言われます。
やりがいもある一方で、そのバランスが崩れると、辞めたい気持ちや自己否定感が強まりやすくなります。
ここでは、看護師という役割と、自分自身の人生との距離感を少し取り戻していくための視点を、一緒に整えていきます。
理想の看護師像から自分を解放する考え方
看護師として働いていると、無意識のうちに理想の姿を自分に重ねてしまうことがあります。
いつも笑顔で、どんな患者にも丁寧で、ミスをしない、弱音を見せない、そんな完璧に近いイメージです。
現場の相談でも、この理想像と現実の自分との差に苦しんでいるという声はとてもよく聞かれます。
大切なのは、理想を持つこと自体ではなく、それを絶対条件にしすぎないことです。
例えば、今日は余裕がなくて笑顔が少なかったけれど、それでも安全確認は丁寧にできた、といったように、自分の中で優先順位を柔らかくしてみることも一つの方法です。
理想の看護師像から少し距離をとり、今の自分ができる範囲を認めていくことで、心の負担は少し軽くなっていきます。
仕事と自分の人生を分けて考える練習
看護師として働いていると、生活がほとんど仕事中心になりやすく、自分の人生そのものが職場に握られているように感じてしまうことがあります。
その状態が続くと、職場でつまずいたとき、自分の全部が否定されたように感じてしまいがちです。
そこで意識してみたいのが、仕事としての自分と、一人の生活者としての自分をそっと分けて考える練習です。
例えば、シフト表とは別に、趣味や休息の時間を書き込んだ自分用のカレンダーを作ってみる、仕事以外のコミュニティに少しずつ顔を出してみる、といった小さな行動でも構いません。
看護師である前に、自分にはいろいろな側面があると実感できてくると、職場での出来事だけで自分の価値を判断しにくくなっていきます。
仕事と人生の境界線を引き直していくことは、辞めるかどうかを考える上でも、心を守る大事な土台になります。
一度離れる選択も含めたキャリアの描き直し
看護師を辞めたいと強く感じているとき、一度現場から距離をとるという選択を考えてみる人もいます。
非常勤や派遣、クリニック勤務、訪問看護、企業系の仕事など、同じ資格を生かしながら、病棟とは違う環境で働く道もあります。
また、思い切って医療以外の分野に挑戦し、その後あらためて看護に戻ったというケースの話が専門家のあいだで紹介されることもあります。
一度離れることは、キャリアの終わりではなく、自分の人生を長い目で見たときの寄り道や調整期間と考えることもできます。
そのうえで、今後の数年間でどんな働き方をしてみたいか、どのくらいの負担なら続けられそうか、紙に書き出しながらイメージしてみると、キャリアの地図が少し描きやすくなります。
看護師というしごととどう関わっていくかを決めるのは、自分自身です。
その選択肢の中に、一度離れてみる道を入れておくことも、心を守るための大切な視点と言えます。
これからを少し楽にするための心の持ち方

辞めたい気持ちがある中で働き続けるのは、それだけで大きなエネルギーを使います。
環境を変えるかどうかを考えるのと同時に、今日からの心の持ち方を少しだけ変えてみることで、感じ方が和らぐこともあります。
ここでは、これからの日々を少しでも楽に歩くための、やわらかな視点をいくつか拾っていきます。
過去の自分を責めすぎないための視点
辞めたいと思うようになった経緯を振り返ると、あのときもっと頑張れたはずなのに、あの場面で言い返せば良かったなど、過去の自分へのダメ出しが止まらなくなることがあります。
けれど、当時の自分は、そのときに持っていた体力や情報、状況の中で、できる限りの選択をしてきたとも言えます。
過去の自分を責める代わりに、よくあの状態でここまで持ちこたえてきたと、少しだけねぎらう視点を持ってみると、心の緊張がゆるみやすくなります。
後悔が浮かんできたときは、その出来事から学べたことを一つだけ書き出してみるのも一つの方法です。
失敗に見える経験も、今の自分の感性や優しさを形作っている要素の一つと考えてみると、過去との向き合い方が少し変わっていきます。
ささやかな安心や喜びを感じ直す工夫
心がいっぱいいっぱいになると、生活の中にあるささやかな安心や喜びを感じ取る余裕がなくなってしまいます。
そんなときこそ、意識的に小さな心地よさを探してみる習慣を取り入れてみると、気持ちの底が少し温まります。
例えば、お気に入りの飲み物をゆっくり味わう時間を一日のどこかに作ってみる、帰り道に空を見上げて今日の天気を感じてみる、心がほっとした瞬間をメモしておくなど、ほんの数分でできることでも十分です。
心理の分野でも、小さなポジティブな経験を意識して集めることが、ストレスに対するクッションになるといわれています。
大きな幸せを無理に探そうとせず、これなら続けられそうと思える小さな心地よさを一つずつ拾い直してみると、日常の色合いが少しずつ変わっていきます。
自分のペースを取り戻すための小さな一歩
忙しい現場で働いていると、何事も周りのスピードに合わせることが当たり前になり、自分のペースという感覚を忘れてしまいやすいです。
まずは、一日の中で五分だけ、自分のために使う時間を意識的に確保してみるところから始めてみると良いかもしれません。
その時間で何をするかは自由です。
何もせずぼんやりしてもいいですし、今日あったことを一行だけメモしてみるのも良いです。
大切なのは、誰かのためではなく、自分のために時間を選び取ったという感覚を積み重ねていくことです。
自分のペースを取り戻す感覚が少しずつ育ってくると、辞めるか続けるかの選択も、周囲に振り回されすぎずに考えやすくなります。
今できる一歩はとても小さく見えるかもしれませんが、その積み重ねが、これからの心の土台になっていきます。
まとめ
看護師を辞めたいと感じる気持ちは、決して特別なものではなく、強い責任と負担の中で働いているからこそ生まれる感情です。
人間関係のストレスや夜勤のきつさ、評価のされにくさなど、表に出やすい理由の裏側には、自己否定や孤独感といった深い思いが重なっています。
心理学の視点から見ても、燃え尽きや完璧さへのこだわり、理想の看護師像とのギャップは、心が限界に近付く大きな要因とされています。
その中で、辞めるか続けるかを白黒で決めるのではなく、異動や働き方の変更など中間の選択肢を含めて考えてみることは、大切な整理のプロセスです。
同時に、感情を書き出したり、小さなできたを拾い直したり、信頼できる人や専門家へ相談したりすることは、自己肯定感を守るセルフケアとして役立ちます。
看護師というしごとと自分の人生との距離感を見直しながら、自分なりの価値観やペースを少しずつ取り戻していくことが、これからの働き方を選ぶ土台になっていきます。
看護師 辞めたいという言葉の中には、多くの葛藤と願いが詰まっています。
その奥にある本音を丁寧にすくい上げていくことが、自分の心と将来を大切にすることにつながっていきます。
参考文献(APA 7形式)
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