仕事で休む人のフォローに疲れると感じる日が続くと、胸の奥に小さな重さがたまっていきます。
「お互い様」と自分に言い聞かせて、休む人を責めたいわけではないのに、気づけば自分の仕事の手が止まり、細かな調整や連絡ばかりが増えていく……。
その積み重ねが、ふとした瞬間に「なぜ自分だけ?」というやりきれない思いに変わることもあるでしょう。
しかし、そう感じるのは決してあなたの性格が冷たいからではありません。 人手不足で余裕のない職場ほど、評価もされない「名もなきフォロー(業務)」が見えないまま増えやすく、責任感の強い人にばかり負担が集中してしまうからです。
この記事では、仕事で休む人のフォローに限界を感じているあなたへ、その心理的負担が生まれる仕組みを紐解きます。
「自分を守る境界線」「業務の見える化」「上司への相談」「セルフケア」という4つの対策を通して、心を守りながら現実的に仕事を回していく道筋を静かに整理していきます。
仕事で休む人のフォローに疲れるのは、優しさが裏目に出ているから

仕事で休む人のフォローが続くと、疲れるのは当然の流れです。
休む人を責めたいわけではなく、場を回したい気持ちが先に立つほど、名もなき業務が静かに積み重なっていきます。
この章では、頑張り方の問題ではなく、心の動きと職場の力学が重なって疲労が増えていく仕組みを整理します。
フォローが自然にできてしまう人ほど、負担の入口に立ちやすい
誰かが休んだとき、手が空いている人がやるのではなく、気づいた人が埋める。
この流れが続く職場では、段取りや連絡が得意な人に仕事が寄っていきます。
頼まれたからではなく、先に動けてしまうからです。
その結果、本人の中では通常業務の途中に小さな割り込みが増え、集中が切れやすくなります。
しかも多くは成果として数えられにくい名もなき業務なので、頑張った感覚だけが残りやすいのです。
「お互い様」を抱え続けると、不公平感は静かに強くなる
最初はお互い様だと思えていたのに、同じ状況が繰り返されると心は少しずつ変化します。
公平さを大切にする人ほど、負担が偏る状態に敏感です。
なのに、言い出せない。
言い出した瞬間に冷たい人だと思われそうで、飲み込んでしまう。
この我慢が続くと、ある日ふっと、なぜ自分だけという感覚が顔を出します。
怒りというより、報われなさと疲れが混ざったやりきれなさに近いものです。
自分が倒れたら回らないと思うほど、休職ドミノの重みを背負いやすい
真面目な人ほど、欠勤が連鎖する怖さを先に想像してしまいます。
ここで自分が踏ん張らないと、次に誰かが倒れるかもしれない。
そう思うと、休む人のフォローを断つ発想自体が悪いことに見えてきます。
ただ、休職ドミノを一人で止めようとするほど、心身の消耗は速くなります。
結果として、自分が限界に近づき、さらに職場の余裕が減ってしまう。
だからこそ、この先は気持ちの根性ではなく、負担の扱い方を変える必要があります。
次は、見えない負担を生む「名もなきフォロー」の正体に進みます。
見えない負担を生む「名もなきフォロー」の正体

名もなきフォローがつらいのは、量が多いからだけではありません。
自分の仕事の外側で発生しているのに、誰の成果にもなりにくく、いつの間にか当たり前として積まれていくからです。
しかも一つ一つは小さく見えます。
小さいのに、確実に集中力と時間を削っていきます。
この章では、名もなきフォローがどんな形で増えやすいのか。
そして、なぜ疲れが強く残るのかを、具体的な場面と一緒に整理していきます。
誰の仕事でもないのに、誰かが必ずやっている作業
休む人が出た日だけ増えると思われがちですが、名もなきフォローは、普段から静かに増えていきます。
たとえば、不在時のメールを一度だけ確認しておく。
返信が必要そうなら、関係者に状況をつないでおく。
会議の参加者に欠席連絡を入れておく。
担当がいない間に来た問い合わせに、仮の返答だけしておく。
どれも数分で終わりそうに見えます。
けれど、こうした作業は終点がありません。
やればやるほど、次も自然に自分のところに流れてきます。
頼まれたわけではないのに、気づいた人の善意で回ってしまう。
その回り方が、負担の見えなさをさらに強くします。
「ちょっとした確認」が積み重なり、自分の仕事が止まる苦痛
名もなき業務で最も消耗しやすいのは、まとまった時間が取られることより、仕事が何度も途切れることです。
たとえば、
集中して資料を作っている途中に、電話が鳴る。
そのまま要件を聞いて、欠席者の代わりに状況を確認する。
確認したら、別の人に根回しをして、簡単に共有する。
席に戻る。
また集中を作り直す。
この繰り返しは、心に小さな摩耗を残します。
一度止まった思考を、もう一度立ち上げるのには力が要るからです。
しかも、こうした割り込みは評価されにくい。
頑張った形が残りにくいのに、疲れだけが残る。
そのズレが、しんどさを深くします。
感謝も評価もされにくいほど、報われなさが心に溜まっていく
名もなきフォローは、うまく回ったときほど見えなくなります。
トラブルが起きなければ、誰も気づかない。
つまり、何も起きないように整えた人ほど、名前が残りません。
さらに厄介なのは、周囲が悪気なく依存してしまうことです。
気づいたらやってくれる人がいる。
だから、自分は気づかなくても大丈夫になる。
その状態が続くと、負担は特定の人に偏ります。
偏りが続くと、不公平感だけでなく、むなしさも増えます。
頑張ったのに、何も変わらない。
むしろ、頑張るほど自分の仕事が押されていく。
この感覚が強まると、心は休職ドミノの怖さを抱えながらも、自分だけが削れていくように感じやすくなります。
次は、なぜ真面目な人にばかりフォローが集中してしまうのか、
その心の癖と職場の力学を整理します。
なぜ「真面目な人」にばかりフォローが集中してしまうのか

フォローが集中するのは、能力が高いからだけではありません。
周囲から見て頼りやすい。
任せても安心。
その印象が積み重なるほど、名もなき業務の受け皿になりやすくなります。
しかも本人の中にも、断りにくさが生まれます。
ここで断ったら、仕事が止まるかもしれない。
ここで引いたら、誰かが困るかもしれない。
そう考えるほど、フォローは優しさと責任感の間に固定されていきます。
この章では、真面目な人に負担が偏る仕組みを、心の動きと職場の力学に分けて整理します。
頼まれる前に動けてしまう人の「気配り」がアダになる
頼まれてから動く人と、頼まれる前に動く人がいます。
前者は、自分の担当がはっきりしています。
後者は、担当の隙間を見つけるのが早い。
たとえば、休む人が出た瞬間に、必要そうな連絡先が頭に浮かぶ。
関係者の予定が崩れる前に、先に共有しておきたくなる。
ミスを防ぐために、確認だけしておこうと思う。
こうした気配りは、職場ではとても助かる力です。
ただ、助かる力ほど、期待されやすくなります。
周囲の頭の中で、次もこの人が動くかもしれないという予測ができてしまうからです。
予測ができると、安心が生まれます。
安心が続くと、気づく人が減ります。
すると、さらに負担が偏ります。
この循環は、誰かが悪いわけではなく、場の慣れで起きます。
だからこそ、本人が気づかないうちに、役割として固定されていきます。
「休職ドミノ」を一人で食い止めようとしていませんか
休む人が増えると、残る人の負担が増えます。
負担が増えると、次の人が倒れやすくなります。
この連鎖は、想像するだけで怖いものです。
真面目な人ほど、この怖さを現実として早めに受け取ります。
だから、踏ん張ろうとします。
自分だけでも回せば、崩れないかもしれない。
自分が抱えたら、他の人の負担が減るかもしれない。
その気持ちは、とても誠実です。
ただ、休職ドミノを一人で止めようとするほど、心身はすり減ります。
睡眠が浅くなる。
休日も頭が休まらない。
ミスが怖くなり、確認が増える。
確認が増えるほど、時間が奪われる。
そして、また余裕がなくなる。
こうした状態に入ると、職場を守るつもりの頑張りが、結果として職場の余裕をさらに減らしてしまうことがあります。
だから、フォローを制限することは、冷たさではありません。
崩れないために必要な調整です。
「頼れる人」という役割が、いつの間にか断れない空気を作る
頼られること自体は、悪いことではありません。
ただ、頼られる頻度が増えると、断る言葉が出にくくなります。
断ったら、期待を裏切る気がする。
断ったら、評価が下がる気がする。
断ったら、関係がぎくしゃくする気がする。
こうした気持ちは、頭で考えるより先に体に出ます。
たとえば、
頼まれた瞬間に反射で、はいと言ってしまう。
頼まれた後で、胸の奥が重くなる。
帰宅してから、どっと疲れが出る。
この反応があるなら、すでに負担は十分に積み上がっています。
次の章では、その積み上がった疲れが、なぜ自分だけという感覚に変わっていくのか。
怒りと不公平感の心理を、もう少し丁寧に見つめます。
「なぜ自分だけ?」という怒りと不公平感の心理学

なぜ自分だけ。
その言葉が浮かぶとき、そこには怒りだけではなく、疲れと期待と我慢が混ざっています。
休む人を責めたいわけではない。
それでも、名もなきフォローが増えるほど、心の中の天秤が傾いていく。
その反応は、性格の問題ではなく、これ以上抱えたら危ないという内側の警報として現れることがあります。
ここでは、不公平感が強くなる仕組みをほどきながら、次の対策につながる形で気持ちを整理していきます。
「お互い様」と思えないのは、心が限界に近づいている証拠
お互い様という言葉は、本来とてもやさしい考え方です。
誰だって体調を崩すことがある。
家庭の事情で急に休むこともある。
その現実を踏まえたうえで、助け合おうとする姿勢なのでしょう。
ただ、その言葉が苦しくなる瞬間があります。
それは、お互い様が、本当は片道になっていると感じたときです。
今日も調整。
明日も連絡。
担当外の確認も増える。
けれど、自分が休む場面を想像すると、同じようにフォローしてもらえる確信が持てない。
そんな感覚が続くと、心は公平さを守ろうとして緊張を強めます。
ここで大事なのは、怒りが悪いのではないという点です。
怒りや不公平感は、これ以上背負い続けると自分が壊れるかもしれないというサインとして働くことがあります。
たとえば、休む人の名前を見ただけで胸が重くなる。
些細な連絡でもイライラが出る。
確認が増えて集中できず、自己嫌悪が出る。
こうした変化は、心が雑になったのではなく、余裕が削られた結果として起きやすい反応です。
そして、真面目な人ほど、ここで自分を責めます。
こんなふうに思う自分が嫌だ。
もっと大人にならなきゃ。
そうやってさらに我慢を重ねると、名もなき業務の負担は増え続けます。
お互い様を取り戻すには、気持ちを押さえ込むより、仕組みと境界線で負担を扱い直す必要があります。
次の章から、そのための具体的な対策に入ります。
次は、心理的負担を減らす対策① 自分の中に「境界線」を引くに進みます。
心理的負担を減らす対策① 自分の中に「境界線」を引く

フォローに疲れる状態から抜ける最初の一歩は、頑張り方を変えることではなく、背負う範囲を決め直すことです。
境界線というと冷たく聞こえるかもしれません。
けれど本来は、心と仕事を壊さないための安全装置です。
名もなき業務は気づいた人の優しさに乗って増えやすいので、境界線がないままだと、いつの間にか限界を越えてしまいます。
ここでは、責める気持ちや罪悪感を増やさずに、線を引くための考え方を整理します。
「できること」と「できないこと」を、先に言葉にしておく
境界線が引けないとき、多くの場合は断る勇気の問題ではありません。
自分の中の基準が曖昧なまま、目の前の困りごとに反応してしまう状態です。
たとえば、不在時のメール確認はできるけれど、代わりに判断して返信まで抱えるのは難しい。
一時的な連絡の代行はできるけれど、引き継ぎの穴を埋めるような調整はできない。
このように、できる範囲を先に言葉にしておくと、頼まれた瞬間の反射で引き受けにくくなります。
断るための武器というより、心を守るための地図を作る感覚に近いものです。
限界は、倒れる直前ではなく「小さな違和感」で知らせてくる
限界は突然来るように見えて、実際は小さなサインが先に出ます。
たとえば、確認の回数が増えて仕事が進まない。
休む人の連絡を見るだけで気持ちが重くなる。
家に帰っても頭が切り替わらず、次の日の段取りが浮かんでしまう。
こうした変化が出ているなら、能力が足りないのではなく、余裕が削られている合図です。
境界線は、この合図が出た時点で引き直すほど効果が出ます。
完全に壊れてから線を引くのでは遅いので、違和感の段階で手を打つことが大切になります。
断ることは関係を壊すより、関係を守る選択になりやすい
断ると迷惑をかける。
そう感じる人ほど、実は周囲との関係を大切にしています。
ただ、無理をしたまま引き受け続けると、心の中に不公平感が溜まりやすくなります。
溜まった不満は、いつか態度や言葉に滲みます。
その方が関係にひびが入りやすい。
だから断ることは、冷たさではなく、長く働くための調整です。
ポイントは、気持ちではなく状況として伝えることです。
今抱えている業務が詰まっているので、代わりに判断までは難しい。
今日はここまでなら対応できる。
この形なら引き受けられる。
こうした言い方は、相手を責めずに境界線だけを示せます。
次は、心理的負担を減らす対策② フォロー業務を「見える化」して共有するに進みます。
心理的負担を減らす対策② フォロー業務を「見える化」して共有する

境界線を引こうとしても、職場の流れが変わらないままだと、名もなきフォローはまた戻ってきます。
だから次に必要になるのは、負担を個人の頑張りから切り離して、仕事として扱い直すことです。
見える化は、誰かを責めるためではありません。
今どこに負担が溜まっているかを、静かに共有するための方法です。
見えないものは分担できません。
見える形になった瞬間に、初めて話し合いができます。
この章では、心をすり減らさずに共有へつなげる考え方を整理します。
属人化したフォローは、善意ではなくリスクとして積み上がる
フォローが一部の人に偏ると、周囲は助かっているのに、職場全体は脆くなります。
その人が休んだ瞬間に回らなくなるからです。
つまり、優しさで回している状態は、裏側では不安定さを抱えています。
ここで大事なのは、属人化を責めないことです。
気づいた人が埋めてきた結果として、そうなっているだけ。
ただ、続けるほど休職ドミノの条件が整いやすくなります。
一人が抱え込み、限界に近づき、次に倒れる。
この連鎖を止めるには、フォローを仕事として可視化し、誰でも扱える形に戻す必要があります。
「気づいた人がやる」をやめるには、やっていることを名付ける
見える化の第一歩は、立派な仕組み作りではありません。
今やっている名もなき業務に、名前をつけることから始まります。
たとえば、
不在時のメール確認。
欠席連絡の共有。
問い合わせの一次対応。
会議のアジェンダ調整。
関係者への根回し。
こうして言葉にすると、初めて業務として扱えるようになります。
名付けができると、次に量を数えられます。
数えられると、偏りが見えます。
偏りが見えると、分担の話ができます。
この順番が大切です。
いきなり分担を求めるより、まずは現実を同じ景色として見てもらう。
その方が、角が立ちにくい。
共有は正しさの主張ではなく、現状の確認として出す
見える化をするときに、心が疲れていると、どうしても不満として出したくなります。
ただ、不満として出すと、相手は 防御の姿勢になります。
そうすると議論が止まります。
だから出し方のコツは、評価や感情ではなく、状況として並べることです。
たとえば、今週は不在対応が何件あって、誰がどれを引き受けたか。
一次対応にどれくらい時間が割かれているか。
通常業務がどれくらい押されているか。
このように淡々と示すと、話し合いは現実ベースになります。
そして、見える化ができると、負担を共有する言葉も作れます。
今日はこの対応があるので、別の案件は誰かに振り分けたい。
この部分は当番制にしたい。
ここまでなら対応できる。
こうした調整が可能になります。
見える化は、自分の心を守るだけでなく、職場が崩れないための土台にもなります。
次は、心理的負担を減らす対策③ 上司に「状況」を相談し、環境を動かすに進みます。
心理的負担を減らす対策③ 上司に「状況」を相談し、環境を動かす

見える化までできても、現場だけで抱え続けると限界が来ます。
なぜなら、人手不足や業務量の偏りは、個人の工夫だけで解決しにくいからです。
ここで大切になるのが、上司への相談です。
ただし、気持ちを分かってほしいという形で話すと、話が止まりやすいことがあります。
一方で、状況として共有すると、職場の課題として扱われやすくなります。
この章では、責める空気を作らずに、環境を動かす相談の仕方を整理します。
相談は弱さではなく、崩れないための状況共有
相談という言葉に、ためらいが出ることがあります。
自分で何とかするべきではないか。
愚痴だと思われないか。
そう感じるのは、責任感が強い証拠です。
けれど、休む人のフォローが特定の人に偏っている状態は、すでにチームのリスクになっています。
今は回っているように見えても、誰か一人の余裕に依存している。
この状態は、次に誰かが倒れたときに一気に崩れます。
だから相談は、助けてくださいというお願いだけではありません。
今のままだと休職ドミノが起きやすいという事実を、早めに共有する行動でもあります。
伝えるときは「感情」より「具体的な現実」を先に置く
上司に話すときに効果が出やすいのは、順番です。
最初からつらいですと言うと、上司側は感情の受け止めに意識を使い、具体策が遅れがちになります。
逆に、現実を先に置くと、議題になります。
たとえば、休む人が出た日のフォロー業務の内容。
不在時のメール確認や一次対応に取られている時間。
通常業務がどれくらい後ろ倒しになっているか。
誰に負担が偏っているか。
こうした情報を淡々と並べると、職場の問題として扱いやすくなります。
そのうえで、最後に自分の状態を添えます。
最近は集中が続かず、ミスが怖くなって確認が増えている。
帰宅後も切り替えにくい日がある。
このような形で、状態を短く伝えると、必要以上に重くならずに共有できます。
すぐに変わらなくても、相談は働き方の基準を作る
相談しても、すぐに人が増えるとは限りません。
業務量が急に減るとも限りません。
それでも、相談には意味があります。
なぜなら、ここまでが限界というラインを、職場の共有事項にできるからです。
限界が共有されると、名もなき業務の扱いが変わり始めます。
誰がやっているか。
どれだけ発生しているか。
当番にできないか。
優先順位を下げられないか。
こうした議論が動き出します。
もし上司が動けない場合でも、相談した事実が残ることで、次に線引きをするときの根拠になります。
今日の不在対応はここまでならできる。
それ以上は通常業務に影響が出るので、別の人に振り分けたい。
こう言える土台ができます。
環境を動かすのは、一気にではなく、基準を作るところから始まります。
次は、心理的負担を減らす対策④ セルフケアで自分の心を守るに進みます。
心理的負担を減らす対策④ セルフケアで自分の心を守る

フォローを見える化して、上司に状況を伝えても、それでもすぐに職場の負担が軽くならないことがあります。
そのとき最後に残るのは、自分の心身の余裕です。
ここを削り続けると、どれだけ対策を積んでも、回復が追いつきません。
セルフケアというと、気休めのように聞こえるかもしれません。
けれど実際は、仕事を回し続けるための基盤です。
休職ドミノを止めたいと思っている人ほど、自分の回復を後回しにしがちです。
ただ、その後回しが続くほど、倒れやすい条件が整っていきます。
この章では、頑張りを増やすのではなく、回復を取り戻すための見方を整理します。
疲れは我慢できるかどうかでは測れない
疲れを判断するとき、人はつい、まだ動けるかどうかで測ってしまいます。
出社できている。
目の前の仕事はこなせている。
だから大丈夫。
けれど、心身の疲れは、動けるうちに進みます。
たとえば、
前は簡単にできていた判断に時間がかかる。
同じ内容を何度も確認してしまう。
仕事が終わっても頭が切り替わらず、帰り道も段取りが浮かぶ。
こうした状態は、根性が足りないのではなく、余裕が減っているサインです。
我慢できるかどうかではなく、日常の反応の変化で見る方が、早めに守れます。
心と体に現れやすいサインを、軽く扱わない
ストレスは、言葉より先に体に出ることがあります。
寝つきが悪い。
夜中に目が覚める。
朝起きても疲れが残る。
小さなことでイライラが出る。
甘いものや刺激の強いものが増える。
スマホを見続けてしまう。
こうした変化が出ているなら、気合いで押し切る時期ではありません。
ここで必要なのは、大きな改革より、回復のための小さな手当てです。
たとえば、帰宅後に仕事の連絡を確認する時間を決めて、それ以外は画面から離れる。
一日の終わりに、明日の段取りを一行だけメモして頭から降ろす。
休憩中に深呼吸を一度入れて、肩の力が入っていることに気づく。
こうした小さな調整は、心の負担をゼロにはしません。
それでも、積み重なる疲れの速度を落とすことができます。
自分を後回しにしないという選択が、結果として職場を守る
真面目な人ほど、最後まで頑張った人が偉いという感覚を持ちやすいことがあります。
けれど、限界を越えて倒れた瞬間に、職場の余裕はさらに減ります。
だから自分を守ることは、わがままではありません。
自分が倒れないことが、休職ドミノの条件を一つ減らすことにもなります。
ここで意識したいのは、頑張りをやめるのではなく、持ち方を変えるという視点です。
フォローはここまでならできる。
それ以上は分担したい。
自分の通常業務を守るために、優先順位をつける。
そして、休む人がいることと、自分が削れることを結びつけない。
この切り分けができるほど、心の中の不公平感は薄まりやすくなります。
セルフケアは、状況を受け入れるためのものではなく、状況に飲まれないための支えになります。
次は、対立をほどくために「休む人」が悪いのではなく「仕組み」の問題だと割り切るヒントに進みます。
「休む人」が悪いのではなく「仕組み」の問題だと割り切るヒント

フォローに疲れているときほど、心は誰かを原因にしたくなります。
休む人が悪い。
もっと責任を持ってほしい。
そう思ってしまう自分に、さらに落ち込むこともあります。
ただ、ここで静かに整理しておきたいのは、休むこと自体を悪にすると、職場の空気も自分の心も固くなりやすいという点です。
問題は個人の善悪より、名もなき業務が見えないまま増え、特定の人に集中しやすい仕組みにあります。
この章では、対立から少し距離を取りながら、心が摩耗しにくい見方を整えていきます。
休む背景には、見えない事情が含まれていることが多い
休みの理由がはっきり説明されるとは限りません。
体調不良でも、詳しく言えないことがあります。
家庭の事情でも、言葉にしづらいことがあります。
相談できずにギリギリまで耐え、限界で休む人もいます。
こうした背景は、外からは見えません。
見えないものは、誤解を生みやすい。
だからこそ、休む人を理解しようと無理をするより、分からない前提で距離を取る方が、心は落ち着きます。
理解しきれなくても、仕組みとして回す。
その発想が、名もなきフォローを個人の感情から切り離してくれます。
責め合いが生まれると、職場はさらに回りにくくなる
休む人を責める空気が強くなると、別の問題が起きます。
体調が悪くても言い出しにくくなります。
小さな不調の段階で相談しにくくなります。
結果として、突然の欠勤が増えやすくなります。
これは、休職ドミノが起きやすい条件でもあります。
つまり、誰かを責めて引き締めたつもりでも、実際には欠勤のリスクが上がることがある。
この矛盾が、真面目な人をさらに苦しくします。
だから、悪者探しをやめることは、きれいごとではありません。
職場を崩れにくくするための現実的な選択です。
割り切りは冷たさではなく、自分の心を守る技術
割り切るという言葉に、罪悪感が出ることがあります。
助け合いを捨てるように感じるからです。
けれど、ここで言う割り切りは、関係を切ることではありません。
背負い方を変えることです。
たとえば、休む人が出ても、自分が全部埋める前提にしない。
名もなき業務は、見える化して共有する。
境界線を先に決めて、ここまでなら対応できると言える状態にする。
上司に状況を共有し、チームとしての課題に戻す。
こうした動きは、冷たさではなく、持続可能さを作る動きです。
自分が倒れないことが、職場の余裕を一つ守る。
その視点を持てるほど、なぜ自分だけという感覚は、少しずつほどけやすくなります。
まとめ あなたはもう十分頑張っている。自分を後回しにしないで
仕事で休む人のフォローに疲れるのは、優しさや責任感がある人ほど、名もなき業務を抱えやすいからです。
なぜ自分だけと思ってしまうのも、冷たさではなく、心の余裕が削られているサインとして自然に出てくる反応です。
境界線を引くこと。
フォローを見える化して共有すること。
上司に状況として相談し、環境の課題に戻すこと。
そしてセルフケアで回復を守ること。
この四つを重ねるほど、負担は少しずつ個人の我慢から離れていきます。
今日の気持ちが、少しでも軽くなりますように。
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