看護師になりたいと思っていたのに、なぜか心が重たく感じる。
そんな風に感じているなら、無理に気のせいだと流さず、一度ゆっくり立ち止まってみませんか。
看護師という仕事は、人の命と向き合う責任があるからこそ、心のエネルギーを多く使います。
向き不向きは誰にでもありますし、頑張りたい気持ちだけでは続かないこともあるものです。
この記事では、心理面から見た「看護師にならない方がいい」と感じる背景や、自分に合う道を見つけるための考え方についてお話ししていきます。
進む前に、不安の正体を少しだけ整理しておきましょう。
看護師にならない方がいいと言われる心理的な背景とは

看護師は「尊い職業」と語られることが多いですが、その裏には心の疲れや葛藤もあります。
命を預かる責任や人間関係のストレス、不規則な勤務による消耗は、想像以上に大きいものです。
現場に立ってはじめて「向いていないかも」と感じる方もいます。
ここでは、そうした心理的な背景をやさしくひもといていきます。
「つらい」と感じやすい職場の特徴
看護師の仕事がつらいと感じやすい理由のひとつに、職場環境の厳しさがあります。
命を預かる現場では、時間の余裕も心の余裕も奪われがちです。
ナースコールが鳴りやまない病棟、常に緊張感が漂うICU、同僚との連携に神経をすり減らす日常。
些細なミスが患者の命に関わるため、常に気を張っていなければならない状況が続きます。
その積み重ねが、やがて心の重さにつながってしまうのです。
環境によっては、叱責が日常になっていたり、相談しづらい空気が漂っていることも。
一度そういった環境に慣れてしまうと、「どこもこんなものだ」と感じてしまい、逃げ場を失うこともあります。
働く環境によって、同じ業務内容でも心の感じ方は大きく変わります。
感情のコントロールが求められる場面
看護師の仕事では、感情を表に出さないことが求められる場面が多くあります。
患者やその家族に対しては常に丁寧な対応を求められ、どんなに疲れていても笑顔で接する必要があります。
感情を抑え込むことが続くと、心の中ではストレスが蓄積されていきます。
表では冷静を装っていても、内心では不安や怒り、戸惑いを抱えていることもあるかもしれません。
とくに、命に関わる場面や、理不尽な要求をされたときに感情を抑えることは、想像以上に負担になります。
誰かの感情に寄り添う仕事であるにもかかわらず、自分の感情を押し殺す場面が多いことに、矛盾を感じる方もいるようです。
日々の積み重ねが心に傷を残す前に、こうした負担に気づくことも大切です。
共感疲労(エンパス疲弊)が起こりやすい理由
人に強く共感できる方は、看護師として大きな力を発揮することがあります。
けれど同時に、その共感力が自分を苦しめてしまうこともあるのです。
患者の痛みや不安、家族の悲しみに深く共感しすぎると、心の中にその感情を溜め込んでしまいやすくなります。
この状態が続くと、「共感疲労」や「感情的バーンアウト」と呼ばれる心の疲れが起きてしまいます。
特に、感情の起伏が激しい職場では、どんなに優しい人でも消耗してしまうものです。
共感できること自体は素晴らしい力ですが、自分の心を守るためには距離感も必要です。
それに気づかず無理をしてしまうと、自分自身が壊れてしまうこともあるため、注意が必要です。
自己犠牲が習慣化しやすい職種の落とし穴
「人のために頑張ることが当たり前」
そう思ってしまいやすい職業が看護師です。
もちろん、その姿勢は尊いものですが、それが行き過ぎると「自己犠牲」が習慣のようになってしまいます。
たとえば、自分の体調が悪くても職場を休めない。
休憩時間を削ってでも患者対応を優先してしまう。
そんな日々を繰り返していると、自分を大切にする感覚が鈍っていきます。
看護師は献身性が求められる仕事ですが、自分をないがしろにすることとは違います。
周りの期待に応えすぎて、自分の限界に気づけなくなる前に。
「無理していないかな」と時々問いかけてみるのも一つの方法です。
心理的に向いていない人の傾向を見極める

看護師という仕事は、誰にでもできるわけではありません。
どれだけ熱意や志があっても、心の特性によって「つらい」と感じやすい人がいることも事実です。
ここでは、看護師の仕事に心理的な負担を感じやすい傾向について触れていきます。
誰かに当てはまるかどうかではなく、「自分のこころに無理がかかっていないか」
そんな視点で読み進めてみてください。
気を使いすぎる人の消耗リスク
周りの空気を敏感に読み取り、つい気を使ってしまう人。
そんな性格は、看護師という仕事の中で評価されることも多いです。
ただし、同時に強いストレスの原因にもなりやすい一面があります。
患者への配慮、同僚や医師との関係、家族への言葉選び。
常に「どう思われているか」を気にしてしまうと、自分の気持ちが置き去りになりやすくなります。
表面上はうまくやっているように見えても、心の中では疲労がどんどん溜まっていくものです。
「自分を守る優先順位」が後回しになっていないか、一度立ち止まって考えてみることも大切です。
人間関係の距離感に悩みやすいタイプ
職場における人間関係は、看護師の心理的負担を大きく左右します。
とくに、距離感を取るのが苦手な人は、相手に気を使いすぎてしまったり、誤解を恐れて本音を言えなかったりと、精神的な疲労を抱えやすい傾向があります。
たとえば、忙しい中で厳しい言葉を投げかけられても、それをずっと引きずってしまう。
人によっては、仕事のストレスではなく、人とのやり取りに一番消耗してしまうというケースもあります。
少し離れて見てみると、「この関係、本当に必要かな」と感じることもあるかもしれません。
人と心地よい距離を取る力も、仕事を続けるうえで大切なスキルです。
正義感が強すぎる人の心の摩耗
「間違っていることを見過ごせない」
そんな正義感の強さは、看護の現場では頼もしく映ることがあります。
でも、理想と現実のギャップに直面したとき、その正義感が自分を苦しめてしまうこともあるのです。
現場では、理想通りにいかないことが日常的にあります。
それをすべて正そうとすると、自分が疲れ果ててしまうだけでなく、周囲との関係にも緊張感が生まれやすくなります。
正しさよりも、状況に応じたバランスを取ることが求められる場面もあるのが医療の現場です。
だからといって信念を曲げる必要はありません。
ただ、自分の心を守るためには、少しだけ力を抜いてみることも必要です。
変化に弱い人のストレス負荷
毎日同じように見える看護の仕事でも、実際は状況がめまぐるしく変わります。
患者の急変、突発的な業務、担当替えなど、予期しない出来事が日常茶飯事です。
変化が苦手な人にとって、このような不安定さは大きなストレスとなります。
「今日は落ち着いていたのに、午後から急にバタバタした」
「急に担当が変わってしまって、準備ができなかった」
そんな場面が続くと、毎日が心のジェットコースターのように感じてしまうこともあります。
柔軟に対応することが苦手な人は、あらかじめ「変化に対する心構え」を持っておくと少し安心です。
心の疲労を避けるためにも、自分のリズムを見つけることがカギになります。
「看護師=やりがいがある」は本当か

看護師の仕事は「やりがいのある仕事」と言われることが多いですよね。
たしかに、人の命に関わり、誰かの力になれる実感があるのは大きな魅力かもしれません。
でも実際には、「やりがいだけでは続けられない」と感じる瞬間もあるようです。
ここでは、そのギャップに戸惑う理由や、心理的な負担を感じるポイントを一緒に見ていきましょう。
「やりがい」があることと「続けやすい」ことは、必ずしも同じではありません。
やりがいの裏にあるプレッシャー
看護師という職業は、感謝される場面が多く、社会的にも意義のある仕事とされています。
でも、その期待に応え続けることがプレッシャーになることもあります。
たとえば、「いつも笑顔でいなければならない」と思い込んでしまったり、「失敗できない」という緊張感に押しつぶされそうになることもあるのです。
誰かの役に立ちたい気持ちが強いほど、自分にかけるハードルも高くなってしまいがちです。
「やりがい」と「完璧さ」を結びつけすぎないように、自分の中で少しずつ整理してみることが必要です。
感謝される仕事でも消耗する現実
患者さんや家族からの「ありがとう」は、心を支えてくれる大きな力になります。
けれど、それだけでは乗り越えられないくらい、体と心が疲れてしまう日もあるのが現実です。
忙しさに追われ、感謝の言葉を受け取る余裕すらなくなると、「何のために働いているのだろう」と思ってしまう瞬間も出てきます。
「誰かのため」だけでは、自分のモチベーションが保てなくなるときもあります。
だからこそ、日々の中で自分の気持ちにも目を向けることが欠かせません。
患者ファーストが自分を苦しめることも
患者さんの気持ちを最優先に考えることは、とても大切な姿勢です。
でも、それをすべて自分ひとりで背負い込んでしまうと、だんだん苦しくなっていきます。
「もっとできたかもしれない」
「こうするべきだった」
そんなふうに反省ばかりしてしまうと、自分を責める気持ちが強くなり、やりがいよりも負担を感じてしまうことも。
ときには立ち止まって、自分の限界を認めることも必要です。
それが、自分の心を守る第一歩になります。
やりがいで全ては乗り越えられない
「やりがいがあれば、どんな苦労も乗り越えられる」
そんな言葉を信じて頑張ってきた人ほど、知らず知らずのうちに無理を重ねてしまいがちです。
でも、現実には睡眠不足や体力の消耗、人間関係のストレスなど、「やりがい」だけではカバーしきれない壁がたくさんあります。
一度立ち止まって、「自分にとって大事なものって何だろう」と考えてみることも一つの方法です。
やりがいに依存せず、自分自身の幸せもちゃんと大切にしていいのです。
仕事としての「安定性」と心のバランス

看護師の仕事は「手に職」であり、就職に困らないとよく言われます。
収入や将来性を考えたとき、「安定しているから選ぶ」という人も少なくありません。
けれど、心の中では「何か違うかもしれない」と感じていることもあるのではないでしょうか。
ここでは、「安定」という言葉の裏にある心の揺れや、無理をしない選択について考えていきます。
収入や職の安定より大切なもの
たしかに看護師は、他の職業と比べて収入が安定している傾向があります。
資格を活かせば全国どこでも働けるという点も、大きな安心材料かもしれません。
でも、「安定しているから続ける」という理由だけで、心の苦しさを見過ごしていないでしょうか。
経済的に安定していても、毎日がしんどいと感じるなら、それは自分の心からのサインです。
「収入」と「安心感」はイコールではないと気づいた瞬間に、見えてくるものがあります。
心から納得できる働き方を探してみることも、一つの選択です。
「続けることが正義」の落とし穴
一度就職したら、簡単に辞めてはいけない。
そんな風に思い込んで、無理をしてしまう人も多いようです。
とくに看護師のような専門職では、「せっかく資格を取ったのだから」「周りも頑張っているから」という気持ちが強くなりがちです。
でも、続けることそのものが目的になってしまうと、本来の自分を見失ってしまいます。
一度立ち止まって、「なぜ続けているのか」「自分は今、満たされているのか」と問いかけてみましょう。
その問いが、新しい一歩につながるかもしれません。
安定を選んだ先にある不安定な心
「安定した仕事に就けたのに、なぜか不安が消えない」
そう感じている人は、実は少なくありません。
見た目には順調に見える仕事でも、心の中では「自分らしくいられていない」と違和感を抱えていることがあります。
このギャップが続くと、自己肯定感が下がったり、モチベーションが湧かなくなったりすることも。
「安定しているから大丈夫」と思い込まずに、心の状態にも目を向けてみてください。
そこに、今の生き方を見直すヒントが隠れているかもしれません。
看護学校や現場で直面する心理的ギャップ

看護師を目指す道のりは、最初から平坦ではありません。
看護学校での実習や座学、そして現場に出たときのリアルな状況。
そこで感じる「思っていたのと違うかも」というギャップに、戸惑いを覚える人も少なくないようです。
ここでは、理想と現実のあいだで揺れる気持ちに焦点を当てていきます。
理想と現実のギャップが心を削る
「人の役に立ちたい」
「感謝される仕事がしたい」
そんな想いを胸に看護の道を選んだ人は多いと思います。
でも、実際の現場では、理想とはかけ離れたシビアな場面が続きます。
患者対応に追われて思いやりを持つ余裕がなかったり、時間に追われて一人ひとりに丁寧に接することが難しかったり。
理想と現実の差に心がついていかないと、「自分には向いていないのでは」と感じてしまうこともあります。
そうした揺れは決して特別なものではなく、多くの人が経験している気持ちです。
実習でのストレスと自信喪失
看護学生にとって、実習は大きな山場のひとつです。
初めて患者さんに接したり、医療の現場で指導を受けたりする中で、緊張や不安がつきまといます。
指導者からの厳しい言葉に萎縮してしまったり、うまく対応できない自分に落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
一度つまずいた経験が、自信を大きく揺るがす原因になることも。
「こんなことで本当に看護師になれるのかな」
そんな不安を抱えているときこそ、自分の気持ちを受け止める時間を持つことが大切です。
新人時代の心理的な壁と乗り越え方
就職後、現場に出たばかりの時期は、多くの人が不安やプレッシャーを感じています。
覚えることが多く、緊張の連続。
「先輩の足を引っ張ってはいけない」と思えば思うほど、心が追い込まれていくこともあります。
ミスを恐れて行動が遅くなったり、注意された言葉がずっと頭に残ってしまったり。
そんなときは、「できない自分」を責めるよりも、「今は慣れる途中」と優しく捉えてみることが必要です。
壁を感じたときには、一人で抱え込まずに周囲の人に頼ってみることも、一つの方法です。
周囲の期待と自己否定感との葛藤

看護師を目指す道には、本人の想いだけでなく、周囲からの期待も強く関わってきます。
「家族のために」
「勧められたから」
そんな理由で進んだ道の途中で、自分自身の本音を見失ってしまうこともあるかもしれません。
ここでは、期待に応えようとする気持ちと、自分の違和感との間で揺れるこころについて見つめていきましょう。
「向いていないかも」と感じる瞬間
ふとした瞬間に「自分は看護師に向いていないのかもしれない」と思ってしまうことがあります。
先輩のようにテキパキ動けない自分。
同僚よりも緊張してしまう場面が多いこと。
そんな自分に気づいたとき、強い自己否定感に襲われてしまうこともあるかもしれません。
でも、それは「向いていない」というより、まだ慣れていないだけということも。
気持ちが揺れたときは、その感情を押さえ込まずに受け止めてみましょう。
親や教師からの期待が重くのしかかる
「手に職をつけなさい」
「安定した仕事だから」
そんな言葉に背中を押されて看護師を目指した人も多いと思います。
でも、進んだ先で自分が本当に納得できていないとき、その“期待”は大きなプレッシャーへと変わっていきます。
「辞めたい」なんて言ったらがっかりされるかもしれない。
そんな思いが、自分の気持ちを見えにくくしてしまうのです。
大切なのは、誰かの期待ではなく、自分の納得感です。
人のために生きすぎてしまう心理
看護師を目指す人の中には、「誰かのために役立ちたい」と強く願う方が多くいます。
とても尊い気持ちですが、その思いが強すぎると、自分を後回しにしてしまう傾向が出てくることもあります。
「人のためになら頑張れる」
「自分のことなんて後でいい」
そんな風に考え続けていると、いつの間にか自分の感情がわからなくなってしまうことも。
自分のことを大事にできてこそ、誰かのために力を注げるという視点も持っておきたいところです。
「辞めたいけど迷う」自責の思考
「辞めたい」と思っても、それを行動に移すことに強い罪悪感を抱いてしまうことがあります。
「ここまで育ててもらったのに」
「投げ出すのはよくないことだ」
そんな思いが頭をよぎるたび、自分の気持ちにフタをしてしまいがちです。
でも、仕事を辞めたいと思うことは、悪いことではありません。
むしろ、それだけ悩むということは、自分と真剣に向き合っている証拠です。
誰かに迷惑をかけたくないと思う気持ちも大事にしながら、自分の声にも静かに耳を傾けてみてください。
辞めたいのに辞められない心理的なブロック

看護師という仕事を続ける中で、「辞めたい」と感じることは誰にでもあると思います。
でも、その気持ちを行動に移せないまま、日々の業務に追われている人も多いのではないでしょうか。
そこには、さまざまな「辞めにくさ」が影響しています。
ここでは、そんな心理的ブロックについて、一つひとつ優しく解きほぐしていきます。
「逃げ」と思われたくない気持ち
辞めたいと思ったとき、まず頭に浮かぶのが「周囲からどう思われるか」ではないでしょうか。
「逃げたと思われたくない」
「弱い人間だと思われたら恥ずかしい」
そんな風に感じて、気持ちにフタをしてしまうこともあります。
でも、本当に逃げなのかどうかは、誰かが決めることではありません。
環境を変えることは、自分の心と向き合うための大切な一歩です。
そこに強さがあることを忘れずにいてください。
キャリアがもったいないという不安
「ここまで頑張ってきたのに辞めるなんて、もったいない」
そんな言葉が、頭の中をぐるぐる回ることがあります。
長い時間をかけて身につけた知識や経験を、手放すことに不安を感じるのは当然です。
でも、無理をして続けた先で心や体を壊してしまっては、本末転倒になってしまいます。
キャリアを活かす方法は一つではありません。
看護師という肩書きを活かして、新しい働き方を探してみるという手もあります。
他にできることがないという思い込み
「看護師しかできない」
そんな思い込みが、行動を止めてしまうこともあります。
専門職として一つの分野を極めてきた人ほど、他の道を考えるのが怖くなるものです。
でも、本当にそうでしょうか。
看護師として身につけた力は、コミュニケーション能力や観察力、対応力など、他の職種でも活かせるものばかりです。
一歩踏み出すのが怖いときは、まず自分の強みを書き出してみると意外な気づきがあるかもしれません。
視点を変えてみることで、選択肢の幅は大きく広がります。
看護師以外の道に進んだ人の共通点

看護師としての道を選ばなかった人や、一度は就いたけれど別の道へ進んだ人たち。
その多くが、ある共通した姿勢や気づきを持っていたりします。
ここでは、キャリアの方向転換をした人たちがどんな視点で行動し、自分の納得できる選択をしていったのか。
心理的な傾向に焦点を当てて、一緒に考えてみましょう。
自分の感情に素直になれた人の強さ
「もう無理かもしれない」
そう感じたとき、その気持ちをごまかさずに受け入れる勇気。
それが、自分の人生を大きく変える一歩になることがあります。
看護師の仕事を続けていく中で、違和感を持ったり、心が疲れ切ってしまったとき。
それに気づきながらも「仕方ない」とやり過ごす人もいますが、立ち止まって「本当に大丈夫か」と問い直せる人には、見えてくる道があります。
その姿勢は、弱さではなく強さです。
心の健康を最優先にした選択
「人に尽くす前に、自分の心を守りたい」
そう感じて、働き方を見直した人もいます。
心が限界を迎える前に、「このままでは続けられない」と気づけたからこそ、新しい一歩が踏み出せたのです。
看護師という職業は、自分を犠牲にしてしまいやすい仕事でもあります。
だからこそ、心の健康を軸に進路を考えることは、とても自然なことです。
気持ちに余裕を取り戻すことで、また誰かの力になれる瞬間も増えていくのかもしれません。
“人を助けたい”という想いの別の形
看護師を辞めたからといって、「人を助けたい」という想いがなくなったわけではありません。
むしろ、その気持ちを違う形で活かしている人も多くいます。
たとえば、カウンセリングや福祉、保育、教育、事務サポートなど。
直接命に関わる場面でなくても、人を支える仕事はたくさんあります。
看護師だけが「人の役に立つ仕事」ではないということに気づいたとき、可能性は大きく広がります。
その視点の転換が、新しい自分をつくっていくのです。
看護師を目指す前に立ち止まって考えてほしいこと

看護師になりたいと思ったその気持ち。
きっと誰かの力になりたいという、まっすぐな想いから始まったのだと思います。
でも、その気持ちだけで走り続けると、自分の心が置き去りになってしまうこともあります。
「本当に自分が求めているものは何か」
それを見つめ直すことは、進む前の大切な準備のひとつです。
ここでは、後悔しないための視点について一緒に考えていきましょう。
自分が「本当に大切にしたいもの」は何か
忙しい日々の中で、自分の価値観に意識を向ける機会はなかなかありません。
でも、進路を決めるときこそ「自分にとって何が大切か」を考えてみてほしいのです。
人の役に立ちたいという気持ちもすばらしいですが、それと同じくらい大切なのは「自分がどう生きたいか」という問い。
どんな働き方をしたいか、どんな生活を送りたいか。
その答えが看護師でない可能性も、否定せずに受け止めてみることが大事です。
向き不向きではなく、心の余白で選ぶ
「向いているかどうか」だけで職業を判断しようとすると、迷いが増えてしまうことがあります。
それよりも、「どれくらい自分に余裕が持てるか」「どんなときに笑っていられるか」といった心の状態を大切にしてみましょう。
自分に合った働き方というのは、努力の量だけで決まるものではありません。
長く続けるには、心に余白を持てるかどうかが大きく関係しています。
その視点で選ぶことで、後悔の少ない選択に近づけるかもしれません。
未来の自分に問いかけてみる視点
「今の自分」だけでなく、「未来の自分」にも問いかけてみましょう。
5年後、10年後、自分がどんな表情で過ごしていたいか。
どんな人たちと、どんな時間を過ごしていたいか。
そうした問いかけは、意外なヒントを与えてくれることがあります。
もしその未来に、心からの笑顔が想像できないなら、進む前に一度立ち止まってみるのも悪くありません。
選択肢は、いつだって一つではないのです。
後悔しないために。心理面から見たキャリア選択のヒント

キャリア選びには正解がありません。
だからこそ、「今」感じていることに正直になって、自分の本音に耳を傾けてみることが大切です。
看護師になるかどうかで迷っているあなたへ、最後に心理面からの視点でキャリアのヒントをお届けします。
これからの道を、少しでも心穏やかに選べるように。
完璧でなくていい。心を大切にする決断
「もっと頑張らないと」
「完璧にやり切らないといけない」
そうやって自分にプレッシャーをかけてしまう人ほど、心が疲れやすくなります。
でも、人は誰でも不完全です。
だからこそ、心を守る選択も大切にしていきたいところです。
「少し苦しいな」と感じたとき、それを見ないふりせずに立ち止まってみること。
その柔らかさが、自分を救ってくれることもあります。
誰かの期待より、自分の納得感を大事に
「親が望んでいるから」
「周りに応援されているから」
そういった気持ちがあることは、とても自然なことです。
でも、それだけで自分の未来を決めてしまうと、どこかでモヤモヤが残るかもしれません。
本当に大切なのは、自分が納得してその道を選べているかどうか。
周囲の期待と自分の想いが違っていたときこそ、自分の声を信じてみてください。
「ならない選択」も人生の正解になりうる
「看護師にならなかったら後悔するかも」
そう感じると、無理にでも進もうとしてしまうことがあります。
けれど、「ならなかった選択」が、その人にとっての正解になることもあるのです。
進むことが正しいとは限りません。
大切なのは、どんな選択でも「自分がどう在りたいか」という軸を持つこと。
その軸があれば、どんな道を選んでも、後悔は少なくなっていくはずです。
まとめ
看護師にならない方がいいかもしれない。
そんな気持ちがふと浮かんだとき、無理に打ち消そうとしなくても大丈夫です。
心の声に気づけたということ自体が、自分自身と真剣に向き合っている証なのだと思います。
この記事では、心理的な負担や向き不向き、人との関係性、将来の不安など、さまざまな視点から「看護師にならない」という選択について考えてきました。
どんな選択であっても、自分の気持ちに正直に、丁寧に選び取った道ならば、それがきっとその人にとってのベストな選択になります。
職業は手段であって、人生のすべてではありません。
だからこそ、自分を大切にできる働き方や、生き方を見つけていってほしいと願っています。
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