朝、布団の中で目が覚めた瞬間から、鉛のように体が重い。
立ち上がろうとしても気持ちが追いつかず、ただ刻々と過ぎていく時間に、焦りだけが募っていく。
仕事に行きたくないけど、行くしかない。
そんな思いを抱えたまま、今日という一日を必死に始めようとしている人は、決して少なくありません。
疲労や職場の人間関係、仕事内容への違和感。
さまざまな理由から、生活や責任のために心に力を込めて職場へ向かう人は、とても多いのが現実です。
それでも、行きたくないと感じる自分を責めてしまい、甘えているのではないかと心の中で問い続けてしまう。
よくある相談の中でも、特に多く聞かれる状態です。
心理学の視点から見ると、この感覚は甘えや弱さではなく、心や脳が過度な負担を察知し、ブレーキをかけている反応だと考えられています。
無理を続けないよう、内側から静かに送られているサインとも言えるものです。
この記事では、「なぜ仕事に行きたくないけど行くしかないと感じてしまうのか」という心の仕組みを丁寧にひも解きます。
その上で、
- どうしても行かなければならない今日を、少しだけ楽に乗り切る心理術
- 見逃してはいけない「心の限界サイン」のチェックリスト
- 「行くしかない」の繰り返しから抜け出し、心を守るための根本解決法
これらを整理して解説していきます。
無理に前向きになる必要はありません。
まずは、今の苦しさがどこから来ているのかを、一緒に見つめるところから始めていきましょう。
なぜ「仕事に行きたくないけど行くしかない」と感じてしまうのか

仕事に行きたくないけど行くしかない。
この言葉には、気持ちの奥で起きている衝突がそのまま入っています。
行きたくない気持ちは、今の負担を減らしたいという自然な反応。
一方で、行くしかないという思いは、生活や責任を守ろうとする現実的な判断です。
この二つが同時に鳴ると、心は休めず、体も動きにくくなります。
ここではまず、その板挟みがどんな仕組みで起きるのかを、やさしい言葉で整理していきます。
「行きたくない」と「行かねばならない」の板挟みになる心理
行きたくない気持ちと、行かねばならない気持ち。
この二つは、同じ人の中で同時に生まれます。
前者は、疲労やストレスを減らしたいという心の声。
後者は、給料や生活、周囲との関係を崩したくないという現実の声です。
どちらも間違いではないのに、同時に強くなると、頭の中で小さな言い争いが始まります。
行かないとまずい。
でも行くのがつらい。
この往復が続くと、決める力が削られていきます。
朝の準備が進まない。
駅へ向かう足が重い。
スマホを見ているだけで時間が過ぎる。
こうした場面は、意志が弱いからではなく、心の中で二つの価値が衝突しているサインとして起きやすいものです。
まずは板挟みになっている事実に気づくだけでも、自責の熱が少し下がることがあります。
責任感という名のブレーキ。心が「拒絶」を始めているサイン
責任感が強い人ほど、行きたくない気持ちを押し込めやすい傾向があります。
迷惑をかけたくない。
休むのは悪いこと。
弱音は言えない。
こうした考えがあると、心は限界に近づいても表に出しにくくなります。
ところが、押し込める力には上限があります。
一定ラインを超えると、心は別の形で止めに入ります。
それが、ブレーキのような感覚です。
急に体が動かない。
出勤前だけ腹痛や頭痛が出る。
会社のことを考えた瞬間に気持ちが冷える。
これは怠けではなく、これ以上は負担が大きいと感じたときの拒絶反応として起きることがあります。
責任感は大切。
ただ、責任感だけで毎日を押し切ろうとすると、心は守るためにブレーキを強める。
そう理解すると、行きたくない気持ちが少しだけ説明のつくものになります。
甘えではない。脳が「危機」を察知している状態
行きたくないと思う自分は甘えているのではないか。
そう感じてしまう人は多いです。
ただ、心理学やストレス研究の考え方では、強い負担が続くと注意や意欲が落ちたり、回避したくなったりするのは自然な反応だとされています。
脳は、危険かもしれない状況から距離を取ることで、消耗を減らそうとします。
人間関係で緊張が続く。
仕事量が多すぎて回復が追いつかない。
評価や叱責が怖い。
こうした状況が重なると、行きたくないという感覚は、心のわがままではなく、負担を知らせる通知のように現れます。
大事なのは、通知を無視して気合で消し続けることではありません。
通知が鳴る理由を知り、今日を乗り切る工夫と、根本原因に触れる道を並べて持つこと。
ここから先は、そのための整理を一つずつ進めていきます。
仕事に行きたくない気持ちを加速させる四つの根本原因

仕事に行きたくないけど行くしかない状態が続くとき。
その苦しさは、気合の不足ではなく、負担が積み重なった結果として起きていることが多いです。
しかも厄介なのは、原因が一つとは限らないところ。
人間関係の緊張と、仕事量の多さと、眠れなさが同時に重なる。
そんなふうに、いくつもの負荷が絡み合うと、心はどこから片づければいいか分からなくなります。
ここではよくある背景を四つに分けて、今の自分に近いものを見つけやすくします。
原因が見えるだけで、責める気持ちは少し静かになっていきます。
職場の人間関係が静かに心をすり減らすとき
人間関係のストレスは、派手な事件がなくても心を削ります。
朝の挨拶で表情をうかがう。
話しかけるタイミングを探して気を張る。
雑談に入れない自分を気にしてしまう。
そんな小さな緊張が一日じゅう続くと、仕事そのものより先に、職場という空間がしんどくなります。
特に、相手の機嫌が読めない環境では、心が休む瞬間が減りやすいです。
怒られないように。
嫌われないように。
迷惑だと思われないように。
こうした配慮は、まじめさの表れでもあります。
ただ、配慮が長く続くと、脳は警戒モードのままになります。
その状態で出勤しようとすると、体が重く感じたり、玄関で足が止まったりすることがあります。
行きたくないという感覚は、人間関係の緊張をこれ以上増やしたくないという、防衛の反応として現れることも多いのです。
仕事内容への違和感と「正当な評価」への飢え
仕事内容そのものが合っていない。
あるいは、やっていることと評価が釣り合っていない。
このズレは、静かに意欲を削ります。
頑張っても報われない気がする。
何を目指せばいいか分からない。
成果よりもミスだけが目につく。
こうした感覚が続くと、仕事は達成感の場所ではなく、消耗の場所になっていきます。
さらに、役割が曖昧な職場では、終わりが見えにくくなります。
頼まれたら断れない。
気づけば仕事が増えている。
それでも評価は変わらない。
この流れの中で生まれるのは、怠けではなく、無力感に近い疲れです。
人は、努力が意味につながると思えるときに踏ん張れます。
その糸が切れかけると、行きたくない気持ちは一気に強くなります。
心が拒むのは、やる気がないからではなく、納得が足りないから。
そう捉えると、次の手が少し見えやすくなります。
蓄積された疲労と睡眠不足が「意欲」を奪うメカニズム
疲労と睡眠不足は、気分だけでなく判断力にも影響します。
寝ても回復した感じがしない。
朝からだるくて、準備に時間がかかる。
仕事のことを考えるだけで、ため息が出る。
この状態では、やる気を出そうとしても、燃料そのものが足りません。
意欲は、気合だけで作れるものではないからです。
疲れが続くと、脳は省エネを優先しやすくなります。
新しいことに取り組むより、回避する方が楽に見えてしまう。
その結果、出勤そのものが大きな負担に感じられます。
また、睡眠が浅いと感情の揺れも大きくなりがちです。
些細な一言が刺さる。
ミスを必要以上に引きずる。
帰宅後も頭が休まらない。
こうして回復の時間が削られると、翌朝の行きたくないが強まっていきます。
まず体調を疑うのは、逃げではありません。
土台を整えることは、心を守るための現実的な手当てになります。
通勤ストレスや生活環境による見えない負荷
仕事の中身だけが原因とは限りません。
通勤そのものが大きな負担になっていることもあります。
満員電車で体が固まる。
乗り換えのたびに焦る。
帰り道も人に酔ってしまう。
毎日同じ道でも、負担は確実に積み上がります。
さらに、生活環境の揺れも影響します。
家で休めない。
家族の事情で時間が取れない。
一人の時間がほとんどない。
こうした状態だと、心が回復する場所がなくなります。
すると、出勤は二重の意味で重くなります。
職場に行くのがつらい。
でも家にいても休めない。
この板挟みは、気づかないうちに限界を近づけます。
もし通勤や生活の負荷が大きいなら、対処の入口は仕事そのものではないかもしれません。
負担の位置を見直すだけで、行きたくないの理由がはっきりしてくることがあります。
【今日を乗り切る】どうしても仕事に行かなければならない時の心理術

仕事に行きたくないけど行くしかない朝は、心に残っている力がとても少ない状態です。
だからこそ、気合で押し切るより、負担を増やさないやり方が役に立ちます。
ここでは、今日という一日を少しだけ楽にやり過ごすための心理術を、具体的な場面に沿って整理していきます。
小さな工夫で十分です。
まずは崩れないことを目標にしてみてください。
「無理にやる気を出さない」という戦略
つらい朝に一番苦しくなるのは、気持ちを無理に上げようとすることがあります。
前向きにならなければ。
元気に見せなければ。
そう思うほど、今の自分と理想の自分の差が広がり、心が余計に疲れてしまいます。
ここで役に立つのが、やる気ではなく作業として扱う視点です。
今日は気分を良くする日ではなく、必要な手順を淡々とこなす日。
そう決めるだけで、心の抵抗が少し弱まることがあります。
例えば、出勤は勝ち負けではありません。
出勤は移動と手続きの連続です。
玄関を出る。
駅まで歩く。
改札を通る。
この小さな区切りに集中すると、心は未来の不安よりも目の前に戻りやすくなります。
気持ちが追いつかなくても進める。
その発想が、今日の負担を減らす入口になります。
出勤前のルーティンを変える。脳を少しだけ騙す工夫
行きたくない気持ちが強い朝は、脳が職場を危険な場所として結びつけていることがあります。
その結びつきが強いほど、いつもの手順をなぞるだけで気持ちが沈みやすくなります。
そこで有効なのが、出勤前の型を少しだけ変えることです。
同じ道を同じ順で歩く。
同じ時間に同じことをする。
この繰り返しは安心にもなりますが、つらい記憶と結びついていると、落ち込みのスイッチにもなります。
例えば、身支度の順番を変える。
朝の飲み物を変える。
通勤の最初の数分だけ別の音を聞く。
こうした小さな変化は、状況を完全に変えなくても、脳の自動反応を少し弱めることがあります。
大きな改善を狙う必要はありません。
今日は、いつもと少し違う要素を一つだけ混ぜる。
それだけでも、重さが少しほどけることがあります。
仕事中、自分を「観客」として眺めるメンタルテクニック
職場に着いてしまうと、気持ちが乱れていても動かなければならない場面が出てきます。
そのときに心を守る方法の一つが、観客の視点を持つことです。
ここでいう観客は、冷たい第三者ではありません。
自分の内側で、今の状態を静かに見守る役です。
例えば、つらい言葉をかけられた瞬間。
胸がきゅっと縮む。
顔がこわばる。
頭が真っ白になる。
そんな反応が出たときに、心の中でこう言います。
今、緊張が上がっている。
今、逃げたい気持ちが強い。
このように実況をするだけで、感情と自分が少し離れます。
感情が全部ではなくなる感覚です。
すると、反射的に自分を責める流れが起きにくくなります。
今日を乗り切るうえでは、完璧にこなすことより、崩れないことが大切です。
観客の視点は、そのための手すりになります。
「終わったら〇〇する」小さなご褒美の正しい設定法
ご褒美を用意する方法は、多くの人にとって現実的です。
ただし、設定の仕方を間違えると逆効果になることがあります。
頑張れたら高価なものを買う。
完璧にできたら特別なことをする。
こうした条件が重いご褒美は、達成できない不安を増やしやすいです。
今日必要なのは、心を動かす大きな報酬ではなく、帰り道に確実に手に入る小さな安心です。
例えば、帰宅後に温かい飲み物を用意する。
帰りに好きな匂いのものを買う。
帰宅したら何も考えずに横になる時間を確保する。
このように、達成のハードルが低く、体を回復させる方向のご褒美が向いています。
ご褒美は、自分を甘やかすためではありません。
回復の時間を予定として確保するための合図です。
今日を乗り切った体を、今日のうちに守る。
その視点で選ぶと、罪悪感も減りやすくなります。
見逃さないで。無理をしてはいけない「心の限界サイン」

仕事に行きたくないけど行くしかない状態が続くとき。
一番こわいのは、つらさに慣れてしまうことです。
最初は違和感だったものが、いつの間にか当たり前になっていく。
そうして限界の線を越えてから、ようやく気づく人も少なくありません。
ここでは、無理を重ねているときに出やすい心と体のサインを、静かに確認していきます。
当てはまるものがあったとしても、責める材料にしないでください。
気づけたこと自体が、心を守る方向への一歩になります。
理由なく悲しくなる。イライラが止まらないなどの感情変化
心の限界が近づくと、感情の動きが以前と変わってくることがあります。
自分でも理由がよく分からないのに、急に気持ちが沈む。
ちょっとした言葉に強く反応してしまう。
人の話が頭に入らず、ぼうっとする。
こうした変化は、性格が変わったわけではなく、心の余力が減っているサインとして起きやすいです。
普段なら受け流せたことが、受け流せない。
普段なら笑って返せたことが、刺さって残る。
それは、器が小さいからではありません。
器に注がれる水が増えすぎて、あふれやすくなっているだけです。
また、感情が揺れると、自責も強まりがちです。
こんなことで落ち込むなんて。
なんで普通にできないのだろう。
その思考が始まったときは、心が疲れている合図として受け取ってください。
感情の問題ではなく、回復の問題。
そう置き換えるだけで、少し息がしやすくなることがあります。
朝の腹痛。頭痛。不眠など。体が発するサイン
心の負担は、体に先に出ることがあります。
特に多いのは、朝にだけ症状が強くなるパターンです。
出勤の時間が近づくと腹が痛む。
玄関を出ようとすると頭が重くなる。
眠ろうとしても目が冴えてしまう。
こうした反応は、体が弱いからではありません。
体が先に危険を察知して、守りに入っていることがあります。
体は言葉を使わないので、症状という形で知らせてくる。
そのイメージです。
また、疲労がたまると回復の質も下がりやすいです。
寝ても休まった感じがしない。
休日に横になっても気が晴れない。
食欲が落ちる。
食べすぎる。
こうした変化が続くなら、心だけで抱えず、体の面から整える視点も必要になります。
体のケアは気休めではありません。
限界サインを小さくするための現実的な手当てです。
「今までできていたこと」が急にできなくなる感覚
限界が近づくと、能力そのものが落ちたように感じることがあります。
前はこなせていた作業が遅くなる。
メールの文面を考えるのに時間がかかる。
簡単な確認でミスが増える。
そうした変化が出ると、多くの人は自分を責めます。
集中力がない。
怠けている。
向いていない。
でも実際には、脳が疲れていて処理が追いつかない状態のことが多いです。
スマホの充電が少ないと動きが鈍くなるように、心身の電池が減ると作業の速度も落ちます。
このときに怖いのは、焦りがさらに負担を増やすことです。
遅れているから急がなければ。
ミスしたから完璧にしなければ。
その力みが、また電池を消耗させます。
もし、できていたことができない感覚が続くなら、努力不足として片づけないでください。
今は、休息や調整が必要な段階に入っている。
そう捉えるほうが、長い目で見て回復につながります。
それでも「行くしかない」と自分を縛ってしまう心の構造

仕事に行きたくないと感じているのに、行くしかないと思い続けてしまう。
その背景には、性格の問題ではなく、考え方の癖や置かれている状況が深く関わっています。
やめたほうが楽だと分かっていても、選べない。
休めばいいと言われても、動けない。
ここでは、なぜ自分を縛る方向へ心が動いてしまうのか、その仕組みをほどいていきます。
理解できると、選択肢は少しずつ見えやすくなります。
「休むことは悪いこと」という罪悪感の正体
多くの人の中には、休むことに対する強い抵抗感があります。
迷惑をかけてしまう。
評価が下がる。
周囲にどう思われるか不安。
こうした考えが先に立ち、体や心の状態よりも、周囲の目を優先してしまいます。
この罪悪感は、生まれつきのものではありません。
これまでの経験や職場の空気の中で、少しずつ身についたものです。
頑張る人が評価される。
休む人は弱いと思われる。
そんなメッセージを受け取り続けると、休息は選択肢から外れていきます。
けれど本来、休むことは責任放棄ではありません。
回復するための行動です。
車がガソリンを入れるように、人も止まらなければ動き続けられません。
罪悪感が強く出たときは、自分の価値観というより、刷り込まれた考えが反応している可能性があります。
そう気づくだけでも、縛りは少し緩みます。
生活への不安と選択肢が見えなくなる感覚
行くしかないと感じる理由の一つに、生活への不安があります。
収入が止まったらどうなるか。
次がすぐ見つかるのか。
今より悪くなったら困る。
こうした不安が強いと、現状がつらくても、動かないほうが安全に見えてしまいます。
心は変化よりも、今分かっている苦しさを選びやすい性質があります。
未知の不安は、既知の苦しさより大きく感じられるからです。
その結果、選択肢は二つに見えがちになります。
今の仕事を続けるか。
全部失うか。
実際には、その間に多くの選択があります。
相談する。
調整する。
一時的に休む。
準備しながら変える。
けれど不安が強いと、視野は自然と狭くなります。
行くしかないという感覚は、現実の制約そのものというより、心が安全を守ろうとして作り出した一本道のことも多いのです。
真面目な人ほど陥りやすい「逃げ場をなくす思考」の癖
責任感が強く、真面目な人ほど、自分に厳しい条件を課しがちです。
途中で投げ出してはいけない。
弱音を吐いてはいけない。
最後までやりきるべき。
こうした思考は、短期的には踏ん張りを支えます。
しかし長く続くと、逃げ場がなくなります。
選択肢を一つずつ消していく考え方だからです。
休むのは甘え。
相談するのは迷惑。
辞めるのは負け。
そうやって残ったのが、行くしかないという道。
この状態では、心は常に追い詰められます。
大切なのは、真面目さを手放すことではありません。
逃げ場を持つことです。
逃げ場があると、人は踏ん張れます。
逃げ場がないと、心は先に壊れます。
行くしかないと思い込んでいるときほど、実は選択肢を思い出す必要があります。
ここから先は、その出口をどう作っていくかを整理していきます。
毎日「行くしかない」を繰り返さないための三つの出口

仕事に行きたくないけど行くしかない。
この状態を今日だけの問題としてやり過ごすことはできます。
ただ、同じ感覚が何日も続くと、心は回復する機会を失っていきます。
大切なのは、いきなり大きく変えることではありません。
出口を三つくらいに分けて、現実的に持てる選択肢を増やすことです。
選択肢が増えると、行くしかないという一本道が少しずつほどけます。
ここでは、無理をしない範囲で試しやすい出口を三つに整理します。
現状を紙に書き出し、ストレス源を外に出す
頭の中だけで考えていると、つらさは大きく見えやすいです。
理由は、感情と情報が混ざってしまうから。
不安。
怒り。
疲れ。
その全部が一つの塊になり、何が苦しいのか分からなくなります。
そこで役に立つのが、紙に書き出して外に出すことです。
きれいにまとめる必要はありません。
仕事のどの場面が一番しんどいか。
誰と関わると消耗するか。
どの時間帯に心が重くなるか。
こうしたことを短い言葉で並べるだけでも、心は少し整理されます。
書くと、つらさが形になります。
形になると、対処が考えやすくなります。
例えば、人間関係が原因だと思っていたけれど、実は睡眠不足が大きかった。
仕事内容が苦しいと思っていたけれど、評価の不透明さが引っかかっていた。
そんなふうに、原因が少し違って見えてくることもあります。
出口は、原因が見えるところから作られます。
まずは一枚の紙で十分です。
職場での環境調整。業務量や人間関係の相談
職場のつらさは、自分の努力だけで解決しないことがあります。
業務量が物理的に多すぎる。
役割が曖昧で終わりがない。
特定の人との関わりで心が削られる。
こうした問題は、環境の要素が強いです。
その場合、少しでも調整が入ると、心の負担は大きく変わります。
相談というと、重い決断に感じるかもしれません。
ですが、相談の目的は辞めます宣言ではありません。
今の負担を言葉にして、調整できる余地を探すことです。
例えば、業務量の棚卸しを一緒にしたい。
優先順位を明確にしたい。
担当範囲を少し整理したい。
こうした言い方なら、責める形になりにくいです。
もし人間関係が原因なら、関わり方や配置の相談という道もあります。
もちろん、すぐに状況が変わらない職場もあります。
それでも、相談を一度試すことには意味があります。
自分が動ける範囲と、動けない範囲が見えてくるからです。
出口を作るための材料が増えていきます。
休職や転職を、自分を守るための選択肢に入れる
心の限界サインが出ているのに、行くしかないを続ける。
その状態が長くなると、回復に時間がかかりやすくなります。
だからこそ、休職や転職を極端な選択として遠ざけないことが大切です。
ここでのポイントは、今すぐ決めるではありません。
選択肢に入れておく。
それだけで、心は少し息ができます。
休職は、心身を立て直すための時間を確保する手段です。
転職は、自分に合う環境を探す手段です。
どちらも、逃げではなく保護のための行動として位置づけられます。
もし眠れない日が続く。
体の不調が増えている。
涙やイライラが止まらない。
そうした状態があるなら、一人で抱えず専門家に相談する視点も必要です。
心療内科や精神科という言葉に抵抗がある場合でも、まずは相談先を調べるところからで構いません。
出口は、用意しておくだけでも意味があります。
今の心に、逃げ場を渡すことになるからです。
自分を責めずに、この状態と向き合うために

仕事に行きたくないけど行くしかない。
この状態にいると、つらさそのものに加えて、自分を責める気持ちが重なりやすくなります。
気合が足りない。
弱い。
みんなはできているのに。
そうやって心の中で自分を追い込むほど、回復は遠のきます。
ここでは最後に、今の状態を少し違う角度から見つめ直し、心を守るための考え方を整えていきます。
頑張り方を増やすのではなく、削られすぎないための視点です。
「弱さ」ではなく、心が正常に機能している証拠
行きたくないと感じるとき、多くの人はそれを弱さだと思い込みます。
ですが実際には、心は負担を感じたときに、危険を避けようとする反応を起こします。
それは、生き物としての自然な働きです。
もし熱いものに触れたら手を引っ込める。
もし息苦しい場所なら外に出たくなる。
それと同じように、職場が苦しい場所になっているとき、心は距離を取りたくなります。
ここで注目したいのは、行きたくないと感じるのは、感じられているということです。
つまり、限界に気づくセンサーがまだ動いている。
このセンサーが鈍くなると、つらさに麻痺し、壊れてから気づくことがあります。
だから、行きたくないは、今の状態を知らせる大切な反応でもあります。
そこに甘えというラベルを貼らず、反応として眺める。
それだけで、少し呼吸が戻ることがあります。
頑張り続けることよりも、自分を保つことを優先していい
多くの人は、頑張り続けることで状況を変えようとします。
もちろん、頑張れた日が支えになることもあります。
ただ、行きたくないけど行くしかないが続いているときは、頑張り方を増やすほど消耗が進むことがあります。
この局面で優先したいのは、成果よりも自分を保つことです。
例えば、今日は百点を狙わない。
最低限でいい。
返信は短くていい。
休憩を確保する。
帰ったら回復を最優先にする。
こうした判断は、手抜きではありません。
長く持たせるための調整です。
人は、長く走ろうとするときにペースを落とします。
同じように、今は心のペース配分を変える時期かもしれません。
そして、もし限界サインが強いなら、休む選択を現実のものとして考えることも大切です。
誰かに相談する。
医療や公的な制度を調べる。
そうした一歩は、頑張りをやめることではなく、自分を守りながら進むための行動です。
仕事に行きたくないけど行くしかない。
その中でも、心を削りすぎない道は必ずあります。
ここまで読んだ時点で、すでにその入口に立っています。
まとめ
仕事に行きたくないけど行くしかないと感じるときは、怠けではなく、心や脳が負担を察知してブレーキをかけている状態であることが多いです。
まずは、人間関係や仕事内容、疲労、通勤など、どこに負荷が集中しているのかを言葉にして整理するだけでも、自責は弱まりやすくなります。
今日を乗り切るためには、無理にやる気を出さず、行動を小さく区切り、回復につながる小さなご褒美を用意することが助けになります。
そして、限界サインが見えているなら、相談や調整、休むことや環境を変えることも含めて、行くしかないを一本道にしない視点が大切です。
今日の気持ちが、少しでも軽くなりますように。
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